3ノ6・TEL25-5251

 そば店に行くなら、僕はまず数点のつまみを注文し、ゆっくりと日本酒を冷で飲みたい。締めにそばをいただき、ほろ酔い加減でさっそうと店を後にする…。知る人はピンと来るかも知れない。そう、剣客商売シリーズなどで知られる作家で、食通の故・池波正太郎のスタイルに昔からあこがれているのだ。

 市内には、美味しいそば店がたくさんある。でも、残念ながらそば一筋という店がほとんど。酒のつまみを出す店は限られている。

 それが、この店の「ひとしなメニュー」を見てうれしくなった。天ぷら盛り合わせ(九百円)、伝説の揚げ納豆(四百円)、いぶりがっことクリームチーズ(六百円)、にしんの甘露煮(六百円)と、酒が進みそうなものが並んでいる。おまけに、僕が大好きな焼酎「もぐら」(鹿児島)、日本酒「雪の茅舎」(秋田)などの名酒もある。

 店主は松尾一希さん(31)。市内のそば店で修業し、二年前にこの店をオープンした。もちろん、そばも七・三、手打ちの本格派。真っ白な更科、黒い田舎の二種を用意し、盛り(五百五十円)から、かしわ(八百五十円)、にしん(千円)など多彩。名物が、人参と小海老のかき揚げ、お茶漬け御膳(千四百円)。かき揚げを半分食べ、残りをご飯の上に載せてお茶漬けとしてたべるという趣向。これまた、酒が進みそうだ。

 更科田舎の食べ比べセット(八百円)をいただいたが、いずれも香り高く、おいしい。のん兵衛に合わせたという甘過ぎないたれも絶妙。エビ天丼セット(千円)は、カラッと揚がった大きな海老天三本、ナス天の天丼と冷たいそばの組み合わせ。どれもボリュームたっぷりだ。「どんな体調のときでも、おいしく食べてもらえるそばを目指しています」と松尾さん。

 定休日は日曜日。営業時間は午後六時~午前三時。(フリーライター・吉木俊司)

ケロコのひとことメモ

 暑くなると、やっぱりツルツルと麺類を食べることが多くなる。夜の宴会の締めも、最近はラーメンより蕎麦。

 この店、前から気になっていたけど、入ったことはなかった。食べたら大正解。打っているのは、爽やかなイケメンオーナー。最初は3人、次は4人で行ったんだけど、違うメニューを頼んでいるのに全員一緒に出て来る。これってすごい。

 更科も田舎も私好み。透明感があって、見るからにおいしそう。危険なのは天丼もおいしいことだ。夜中にお蕎麦と天丼…。おいしいから仕方ない。

2019年07月09日号掲載