img「始めさせていただいたのは昭和六十年ごろからでしょうか。当時、札幌までお稽古に通っていましたが、お稽古で使ったお花を何とか生かしたいと、お願いをして交番の中に飾らせていただくことにしました」と河村和子さん(78)。

河村さんは二十年以上にわたり、旭川東警察署金星交番(東三ノ五)にボランティアで花を活けてきた。交番の入口を入ると、正面奥に優雅に活けられた花が目に入る。「一番良いところに飾ってくださるので、大変幸福です」と微笑む。

河村さんが生け花を始めたのは、結婚後、三十代に入ってからという。若い頃から、お花とお茶を習いたいと思っていたが、戦後の混乱期はそんな世相ではなかった。時代が落ち着きを取り戻した時、お茶の先生が近くに住んでいると知り、教授を願うと、お花の先生でもあったので、お花とお茶を同時に習うことができた。お花は小原流、お茶は裏千家だった。以後、四十数年絶えることなく続け、自宅で教室を開いているほか、旭川農業高校にも、お花を教えに出かけている。

河村さんが金星交番にお花を活けに通うのは週一回の割合。「住まいが近く、徒歩で七、八分ですから…」。二十年以上も続けるのは大変な努力が必要かと思うが、河村さんは「かつて交番の近くに精神障がい者の小規模施設があり、私がそこに勤めていた時、交番のおまわりさんに大変お世話になりました。その恩返しもあるんです。それに、好きなお花を、みなさんに見ていただくのが嬉しいから続けてこれたのだと思います」と淡々と語る。

同交番の川内谷美幸巡査部長は「交番は堅いイメージがありますが、花があると、明るく和やかな雰囲気になります。本当にありがたいことです」と感謝する。

河村さんは「季節、季節のお花をどう活けるのかをイメージしながら、交番に向かうのも楽しいことです。できる限り、これからもずーっと続けていきたい」と話している。