九三年(平成五年)に六十八歳で他界した小説家安部公房の子どもの頃の写真や演劇台本などの資料、書籍を展示した「安部公房文学室」が郷土誌あさひかわの編集室内(宮下通七駅前ビル六階)に開設され、無料で公開している。

 安部公房の父浅吉と母ヨリミは東鷹栖村(現旭川市)の出身で、同誌の渡辺三子代表とは親戚同士。渡辺代表の生家も安部家とは近所で、医師だった浅吉がドイツに留学していた間の小学校時代を公房は旭川で過しており、渡辺代表とも親しい間柄だった。

 公房の没年に同誌で追悼特集号を発刊したところ、全国の安部公房ファンに口伝てで広がり、交流の輪が広がった。渡辺代表は「私小説を書かなかった公房でしたから、幼少の頃の写真や年賀状などは大変希少らしく、多くのファンから『資料を散逸させないで』との声をいただき、展示することにしました」と話す。

 七七年(昭和五十二年)に旭川で行われた舞台「イメージの展覧会」の公演では、移動や宿泊、チケット販売などに追われ、結局自分は舞台を見れなかったことなど、渡辺代表が在室時には、公房にまつわる隠れたエピソードも聞かせてくれる。

 開室日は毎週木曜日の午前十時から午後五時半まで。問い合わせは同誌編集室(℡22―2226)へ。