ベストセラー「里山資本主義」などの著書で知られる藻谷浩介さん(日本政策投資銀行地域企画部特別顧問)の講演会が九日、市民活動交流センターで開かれた。

 「旭川市の生き残りと、ものづくり大学・新市庁舎・観光立市」と題し、旭川の進むべき道を、全国の都市を踏破した豊富な経験と、緻密なデータを駆逐して語った。

 藻谷さんは、旭川市(東川と東神楽、鷹栖の三町を含む)と札幌市、東京都、網走管内西興部村などの最近の人口動態を示し、「西興部村ではほぼ横ばいだが、残りの自治体では〇歳から十四歳、十五歳から六十四歳までの人口が大幅に減少している。また、これら自治体では六十五歳以上の高齢者が大きく増加し、特に七十五歳以上の増加が著しい。計算上ではあと数十年すると人口がゼロになる。大きな都市が発展すると考えるのはウソ。西興部村のような小さな自治体が生き残る。どのような人口構成になっているかを基礎データに将来を考えなければならない」と解説した。

 旭川地域の産業に活路を見い出すには、「地元産品の消費に努めること。旭川市と周辺町の住民の年間消費額のうち一%を地元産品の消費に当てることで、年間七十二億円のカネが地元に落ちる。これで二千四百人の雇用が可能だ。ニセコの道の駅で売っているものすべてが、ニセコ産だ。隣の倶知安のものぐらい少し置いてやればいいのに、と思うくらい、全部ニセコ産」と解説。

 「地元産品のブランド化と国際市場の開拓、地産地消化を支援できるコンサルタント機能を備えた地元大学の維持強化。それに上川管内でカネの回る国際観光に向け、既存のやり方を刷新する必要がある」「旭川の弱点は、にぎわう市街地と、札幌の時計台のような歴史的なテイストがないことだ。現市庁舎を生かさない手はない。地元の市民がつまらないと思っているものに、案外と価値がある」などと力説した。