生きとし生けるもの 写真家、今津秀邦さんが監督した映画「生きとし生けるもの」の劇場上映が三日から、シネプレックス旭川(永山十二ノ三ウェスタンパワーズ内)のほか、札幌、東京で始まった。初日、シネプレックス旭川での上映後に、今津さん、ナレーションの津川雅彦さん、出演した絵本作家のあべ弘士さんが、満員の観客の前で舞台あいさつを行った。

 映画は北海道に生きる動物を撮影した自然ドキュメンタリー。キタキツネ、ヒグマ、タンチョウ、オジロワシ、ナキウサギなど様々な動物のほか、サケやイトウなど水中の生きもの、また虫の姿も捉えている。映画の冒頭と最後に津川さんのナレーションが入っている以外、セリフがない。

 今津さんは「五年の歳月が掛かったが、納得の行く作品になった」。セリフや解説の字幕を入れなかった理由について「それだと、言葉を映像で確認する作業になってしまう。見たままに動物に感情移入してもらえればと思って作った」と話した。

 津川さんはかつて、マキノ雅彦の名で監督した映画「旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ」の制作時を振り返り、「あの映画も今津さんに動物の撮影を担当してもらった。やっぱりこの人が一番うまい」と今津さんを讃えた。

 あべさんは映画の冒頭、美唄市の宮島沼で八万羽のマガンが、夜明けとともに一斉にねぐらを飛び立つ様をスケッチするシーンで登場している。マイクを渡されたあべさんは「主演男優賞を目指しています」と笑いを誘って会場を和ませた。セリフがほとんどないこの作品について、「言葉っていらないな、と思った」と話し、動物が生きてやがて死を迎えるという光景には、人間が考えつく物語以上の力がある、と語った。

 今津さんはあいさつの最後に、撮影に協力したカメラマンのうち会場にいた五人を壇上に上げて、一人ひとりを紹介。その労をねぎらっていた。