市民実行委員会(松田忠男会長)が運営する第四十四回小熊秀雄賞の最終選考会が二日夜、旅館「扇松園」(高砂台三)で開かれ、石川県宝達志水町在住の酒井一吉さんの詩集「鬼の舞」(能登印刷出版部発行)を選出した。

 今回は全国から九十八点の応募があった。市民実行委員会による第一次審査、道内在住の選考委員による第二次審査を経て、十作品が最終選考にノミネートされた。

 選考委員は、辻井喬(詩人・作家)、工藤正廣(詩人・北海道大学名誉教授)、石本裕之(詩人・旭川工業高等専門学校教授)、藤井忠行(造形作家)の四氏。辻井氏は、体調不良のため出席せず、随時電話で意思を伝える形になった。

 選考会は二時間以上に及び、議論の末に「近頃の現代詩に見られる言語実験のような表現がなく地味ではあるが、働くということ、あるいは自分が生きている郷土への思いを丁寧に、彫るように書き込んでいる。言葉の密度が高く、重厚な作品群は小熊賞にふさわしい」として酒井さんの詩集「鬼の舞」に賞を贈ることを決めた。

 酒井さんは、一九四七年(昭和二十二年)石川県志雄町生まれ。詩と詩論「笛」同人。私鉄の運転士を三十七年間勤め、現在はりんご農家。受賞作は二冊目の詩集。

 受賞について酒井さんは「納得のいく作品も書けず能力の限界を自覚するようになり、詩作の中断と「笛」の退会を申し出たところだった。そんな折の受賞の知らせ。喜びというより驚愕が頭の中を空白にした。大きく重い栄えある賞をどう受け止めるか。自問の答えはまだ出てこないが、素直に喜びとして受け入れ、折れそうなペン先に励ましをいただいたと深く感謝するのみと思っている」とのコメントを寄せた。

 第四十四回小熊秀雄賞の贈呈式は、五月十四日午後三時から、花月会館(三ノ七)で開かれ、酒井さんに正賞の「詩人の椅子」と副賞三十万円が贈られる。