呉氏の報告書から100年

 明治時代以降、精神障がい者がどのような扱いを受けてきたかを描いたドキュメンタリー映画『夜明け前―呉秀三と無名の精神障害者の100年』(今井友樹監督・二〇一八年)の上映会が十二月九日(日)、市障害者福祉センター・おぴった(宮前一ノ三)で行われる。きょうされん(共同作業所全国連絡会)結成四十周年記念映画・道北実行委員会の主催。

 一九一八年(大正七年)、東京帝國大学教授の呉秀三(一八六五―一九三二)が、精神疾患の患者たちが「私宅監置(座敷牢)」に押し込まれている実情を憂い、その解決に奔走して報告書『精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』を提起してから百年。報告書は、十数万人の精神病者の救済・保護は人道問題で、早急に行われるべきだと訴えている。

 昨年末から今春にかけて、精神障がい者の家族による虐待死亡事件(大阪府寝屋川市)や監禁事件(兵庫県三田市)が発生するなど、百年前と何ら変らない状況が続いている。

 映画は、結成から四十周年を迎えたきょうされんが、日本精神衛生会と共同制作したドキュメンタリー。全国で上映会が企画開催されている。

座敷牢と精神医療史ミニ展示も

 実行委員会メンバーの旭川精神障害者家族連合会の五十嵐広平事務局長(73)は、「ドイツ留学を経験した呉教授は帰国後、精神病患者のための公立病院の設置を国に求めましたが、聞き入れてもらえませんでした。国が戦争に向かう準備に奔走していたからです。現在も旧優生保護法の名のもと、強制的に避妊手術が行われたことが明らかになったり、女性国会議員が性的少数者を『生産性がない』と発言するなど、優生思想の台頭が気がかりです。安倍政権が強行した安保法制などと重ね合わせると、呉教授の時代と似て来ています。障がい者など、いわゆる弱者の置かれている状況に無関心であってはならない時です。この映画が、そのキッカケになればと思っています」と話す。

 映画上映に合わせて、愛知県立大学の橋本明教授の協力による「私宅監置と日本の精神医療史・ミニ展」も行われる。群馬県で一九一〇年に写された私宅監置室の老人の写真など、十二点のパネル写真が展示される。

 実行委員会の広報を担当する安藤路恵さん(46・全国障害者問題旭川サークル代表)は「私宅監置室や県の公文書からみた私宅監置患者、私宅監置廃止後の私宅監置などの様子が分かる写真を展示します。映画の前後に見ていただくと、より理解が深まると思います」と来場を呼び掛けている。

 上映は①午後二時半、②午後五時半の二回。上映時間は六十六分。

 前売チケットは八百円(当日千円)。チケットは、旭川精神障害者家族連合会・五十嵐さん(TEL090―1861―0794)、あかしあ労働福祉センター・川合さんか今野さん(TEL57―0888)、NPO法人ニムビン・梅本さん(TEL34―8988)へ。