染物の老舗、近藤染工場(市内一ノ三)に九日午後、一通の手紙がファクシミリで届いた。

 「はじめまして。突然ですが、コロナ医療従事者を応援するための、『横断幕』を作っていただきたいのです。代金は、私が払います」

 手紙の主は、旭川出身で現在は小樽に住む女性だった。

 「以前東京の永寿病院でクラスターが発生したときに、近隣の有志が横断幕を近くに掲げ、スタッフさんはとても励まされたそうです」

 「厚生病院、吉田病院、療育園、日赤などの窓から見える所、または通勤される方々の目に留まるところがあれば、ぜひお願いしたいのです」

 担当したのは、同社常務の近藤耕介さん(42)。感激した。自腹を切ってでも故郷を応援したいと行動する女性の気持ちに応えたいと思った。

 女性とファクシミリやメールでやり取りしながら、横断幕は縦九十㌢、横四㍍の大きさ、青色の地に白抜きの文字に決めた。「応援してます! ○○病院」「応援してます! 北海道療育園」

 そのかたわら、女性が希望する四施設の近くに横断幕を掲げられる場所を探した。幸い二カ所は知人で、快諾してくれた。

 近藤さんが価格の面で協力したいと思い申し出ると、女性は「それでは申し訳ない。いただいた定額給付金の使い道に困っていたので、それを充てたい」と話したという。

 「もちろん精一杯協力させていただきました。それにしても立派な方っているものですね」と近藤さん。

 出来あがった横断幕は、十七日から二十一日にかけて、近藤さんと社員の手で四施設で働く医療スタッフの目に触れやすい場所に掲げられた。  (工藤稔)