古川博之・前旭医大病院長(66)の病院長解任撤回を求める署名活動を行っていた佐々木良さん(38)、香苗さん(39)夫婦が三日、集まった署名一万五千二百十筆を同大に提出した。

 古川氏は二〇一〇年、肝臓移植のスペシャリストとして、同大病院の肝胆膵・移植外科教授として招へいされ、多くの肝臓移植手術を執刀している。しかし新型コロナ感染患者の受け入れを巡り、学内会議の情報を外部に漏らして混乱を招いたという理由で一月二十五日、同大から病院長を解任された。

 佐々木さん夫婦の長男・Aくん(4)は二年前、「先天性門脈欠損症」という肝臓の病気の影響で食道に何度も静脈瘤ができ、破裂すると死に至る危険性が高いため、良さんがドナーとなり、古川氏の執刀で肝臓移植手術を受けた。Aくんは現在も週一回、同氏の診察を受けるため通院している。

 良さんが一月二十八日に自身の診察を受けた際、古川氏から「病院長を解任になり、三月で退職する」と告げられたという。佐々木さん夫婦は「誰かが立ち上がらなければ」という思いから同二十九日、インターネット上の署名サイト「Change. org(チェンジ・ドット・オーグ)」で、古川氏の病院長解任撤回を求める署名を立ち上げた。その後、書面での署名も並行して行い、立ち上げから約一カ月間でオンラインで六千百四十七筆、書面で九千六十三筆の署名が集まった。

 香苗さんは「短い期間でこれだけ多くの方に賛同いただき、心から感謝しています。息子が、これまでの痛く苦しい治療などを乗り越えて来られたのは、古川先生との絆(きずな)のおかげ。先生を失うかもしれないという恐怖は計り知れず、言葉では言い表せません」と話した。

 また、署名を受け取った大学側からは、今後の対応について「役員会に伝え、何らかの形で回答する」と話があったという。香苗さんは「大学側からきちんと納得のいく回答が得られるまで、動き続けたいと思っている。この署名の重さを受け止めていただき、役員会など話し合いの場を設けて、しっかり考えていただきたい」と強く訴えた。(東寛樹)