毎週、競馬専門紙やスポーツ紙の記者からレース関連のコメントを求められている丸ちゃんだが、競馬雑誌やスポーツ紙の企画物の取材を受ける機会もちらほら。十月初めにはスポーツニッポン紙の取材を受け、北海道シリーズで飛躍した注目の若手騎手として紹介された。

 そして十月半ばから、この「丸ちゃん通信」の連載も始まった。しかし、私というフィルターを通して書かれた記事に、丸ちゃんはあまり満足してはいないようだ。

 この間も、第三回目の原稿にチラッと目を通すなり「この文章、変えてくださいよ」とビシッと言われてしまった。私の表現の仕方に、自分との感性の違いを感じ取ったのだろう。人懐っこい笑顔に似合わず、辛口の丸ちゃんにこちらもタジタジ。

 「そんな厳しい指摘をするなら、取材時間をもっと取ってよね~」と、多忙のため、最近はほんの数分しか話す時間のない丸ちゃんに、心の中で文句をブツブツ。けれども、彼の言い分もよくわかるのだった。私も以前三回ほど取材を受けて記事にしていただいたのだが、私ではなく別の人について書かれているような違和感があり、記者と自分との温度差を感じた経験があるからだ。

 「自分で言いたいことをうまく表現できないというのもありますけど、僕の考えがうまく伝わっていないと感じますね」というように、丸ちゃん自身、私以外の取材においても、自分が意図したのとは違う表現でコメントが掲載される場合が多いと思っている様子。その結果どうなったかというと「しゃべる内容の密度を薄くしたり、オブラートに包むようになりました」。

 彼のこの言葉に正直、マズイと感じた。「丸ちゃん通信」では、等身大の丸ちゃんを書きたいと思っているのに、私に対してもオブラートに包んで話をされたら、とっても困る。

 さらに追い討ちをかけるように「僕は人をあまり信用していません。人に対して疑心暗鬼なんですよね」という言葉まで飛び出したので、「じゃあさ、私に対しても疑心暗鬼なわけ~?」と思わず聞いてしまった。

 すると「うーん、どうなんでしょうねえ。そうかもしれませんねぇ」と私をガックリさせるような答えが返ってきた。丸ちゃんと私の会話は、ああ言えばこう言うで、同郷同士、気を遣わない仲のように思っていたのだが、二人の間には意外と深い溝があったのかもしれない。 

 取材する側とされる側。お互い他人なのだから、温度差があるのも当然なのだが、それでも私は、丸ちゃんの感性にできる限り近づき、ありのままの姿を文章で表現して、丸ちゃんを唸らせる記事を書きたい。この連載が続く限り、二人の間に横たわる溝を埋める努力も続けていくつもりだ。

スポーツニッポン・鈴木正記者の取材を受ける丸ちゃん。言葉を選んで受け答えしていました