「地域の高等教育の将来を考える公開討論会」が二日、勤労者福祉会館で開かれた。東海大学旭川キャンパスの閉校に危機感を抱いた企業経営者らでつくる「旭川に公立『ものづくり大学』の開設を目指す市民の会」(長原實会長)と市民グループ「創造と改革」(小野寺康充会長)が共催の形で企画。市民約二百人が集まった。

 「子どもたちに、どんな『まち』を残すのか」「『ものづくり大学』『地域の大学』が我が故郷の未来を拓く」をテーマに、日本銀行旭川事務所所長の臼井正樹さんと旭川大学理事長・学長の山内亮史さんが語り合った。市民の会の長原實会長が進行役を務めた。

 臼井さんは「旭川は農産物など多くの資源を持っているが使い切っていない。観光や医療の分野も、この二つを結びつけ外国から観光客を呼び込むことを考えなければならない。今後、旭川の人口はどんどん減少し、経済の縮小は避けられない。官は十年、二十年後を見据え、具体的な青写真を示さなければならない。高等教育機関を充実させ、技術力を高めることが必要だ。国土面積が狭いオランダは世界第二位の農業輸出国になっている。これは大学研究の技術が寄与した結果。大学が元気になることで、若い人たちが集まり、地域が活性化する。秋田の国際教養大学は世界に羽ばたく学生を育成するという明確なビジョンを掲げ、五~六年で全国トップクラスの大学になった。旭川地域にも、ものづくりの理念をもった大学が設置されることを期待する」と具体的な例を示しながら熱を込めて語った。

 山内さんは「グローバル化の中、質の追求が求められる時代。大学は若い人に何らかの刺激を与え、その創造力を喚起するものでなければならない。私が旭川大学に赴任した時、当時の五十嵐広三市長は『一つの大学づくりは一つのまちづくりに繋がる』と語った。私もそういう思いで大学運営に携わってきた。地域にこだわった地域への貢献はグローバル化の中でも普遍であり、世界への貢献に結びつくと思う。秋田の国際大学を参考にしながらも、それとは違った指標を持った大学づくりを考えたい」と地域の大学の特性は地域貢献だと力説した。

 長原さんは「東海大学の創始者の松前重義さんは学生たちを『若き日に汝の思想を星に繋げ』と鼓舞した。若い人たちの心を奮い立たせ、夢を語り、目標を持ち、知力・創造力を高めるのが、これからの大学の役割。旭川にものづくりのための公立大学の設置を目指し、十一月におこなわれる市長選の公約にしてもらえるよう全力を尽くそう」と訴えた。

 臼井さんは一九六一年(昭和三十六年)大阪府生まれ。神戸大学卒後、日本銀行に入行。一三年(平成二十五年)旭川事務所長に就任。旭川経済の活性化について、各所で持論を展開している。あさひかわ新聞に「経済・よもやま話」を連載中。

 山内さんは一九四一年(昭和十六年)札幌市生まれ。七〇年(同四十五年)北大大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学後、旭川大学へ。二〇〇三年(平成十五年)学長、〇四年から理事長を兼務。

 長原さんは一九三五年(昭和十年)東川町生まれ。六三年(同三十八年)から三年間西ドイツで研修。六八年(同四十三年)インテリアセンター(現カンディハウス)設立。一二年(平成二十四年)北海道功労賞受賞。