第四十九回小熊秀雄賞の最終選考会が九日、旭川市高砂台の旅館「扇松園」で行われ、網谷厚子さん(61、沖縄県名護市)の『魂魄風(まぶいかじ)』(思潮社)に贈ることを決めた。

 市民実行委員会(橋爪弘敬会長)の主催。全国三十二都道府県から八十九点の応募があった。対象は、二〇一五年一月から十二月末までに刊行された詩集。

 選考委員は、石本裕之(詩人・旭川高専教授・旭川)、アーサー・ビナード(詩人、エッセイスト・東京)、堀川真(絵本作家・名寄市)、佐川亜紀さん(詩人・横浜市)の四氏。実行委員会の石川郁夫さんが進行役を務めた。

 実行委員会による第一次審査で十三点を選出。その中から二次選考として、実行委員会と四人の選考委員が各二点を推薦し、七点が最終選考会に進んだ。最終選考候補は市民実行委員会のホームページなどで公表された。

 最終選考会は会員ら約三十人が見守る中、公開で行われた。四人の委員が、七冊の詩集について講評する形で選考が始まり、二時間を要して五点に絞り込んだ。その後の議論の中で、委員二人が自分だけが推す作品を諦めると表明し、網谷さんの『魂魄風』と、戸谷崗さん(埼玉県飯能市)の『私たちはどんな時代を生きているのか考』(影書房)の二点が残った。網谷さんの作品は「沖縄出身ではないのに、沖縄に根があると感じさせる。沖縄の今が見えてくる」と高く評価された。一方の戸谷さんの作品は、「取材と土台づくりはしっかりしているが、最後の一人称に“なり切る”という仕上げが出来ていない」「日本の病巣をたくさん挙げたのに、共感性にまで至らなかった」などとして、全員一致で『魂魄風』を選んだ。緊迫した議論は、三時間に及んだ。

 網谷さんは一九五四年(昭和二十九年)、富山県上市町生まれ。お茶の水大学大学院卒。都立高校の教諭、副校長を経て、現在、沖縄高専教授・図書館長。名護市辺野古在住。

 選考会場から電話で受賞を知らされた網谷さんは、「午後六時になっても知らせがないので諦めていました」と喜びの声を上げ、「歴史ある、名誉ある賞をいただいて光栄です。八冊目の詩集で、初めて小熊秀雄賞に応募させていただきました。これまで七冊の詩集は、難しい、難解と言われましたが、今回はメッセージ性の強い作品になったので、可能性を試そうと思ったんです」と語った。

 四人の選考委員の選評と作品紹介は、あらためて掲載します。

 贈呈式は五月十四日午後三時から、旭川トーヨーホテル(七ノ七)で開かれ、受賞者による詩の朗読、選考委員による講評などが行われます。

 参加費は、会員五百円(非会員七百円)。問い合わせは、市民実行委員会事務局の吉木さん(TEL090―7517―7244)へ。