北海道新聞の前旭川支社長、高田正基さん(62)が、現役記者時代に書いたコラムをまとめた「誰もが歴史を紡いでいる」を自費出版した。

 高田さんは、一九五四年(昭和二十九年)、空知管内秩父別町生まれ。二〇一二年六月から三年間、旭川支社長を務めた。現在は北海道文化放送(UHB)に転じ、取締役経営企画室長。

 書名は、朝刊の「風 論説委員室から」に初めて書いたコラムの見出しだ。一九五四年(昭和二十九年)九月二十六日夜に起きた青函連絡船・洞爺丸の転覆沈没事故と、太平洋ビキニ環礁で米国水爆実験の死の灰を浴びた第五福竜丸の事件、そして高田さんの先輩にあたる深川西高の生徒の自死事件をつなぐ糸と、報道者という自らの立場や生き方を重ね合わせた、その後の高田記者の揺るぎない視座を示唆するコラムである。

 第一章「へっぴり腰の記」、第二章「母の歌、友の歌」、第三章「立て、ランソの兵よ!」、第四章「『あなたは…』という問い」に百六編のコラムが収められている。「普天間に描く夢」「『鉄の暴風』六十年」「阿波根主義」「海兵隊異聞」などなど、沖縄に取材したコラムが多いのが目を引く。

 送られてきた本に添えられた手紙には、次のようにあった。

 ――新聞のコラムなどしょせん読み捨てられるものであるとは承知しつつ、いまさら形に残しておきたいと思い立ったのは、歳をとったがゆえの感傷によるところ大です。そしてそれは、新聞記者という仕事が好きだったということの証左でもあるでしょう。(中略)

 駄文の寄せ集めの上梓、言われるまでもなく笑止の沙汰ではありますが、私なりに思い入れのある文章も何篇か交じっています。お暇なときの時間つぶしにでもお目を通していただければ幸いです。

 おっしゃる通り、短い文章が詰まっているから、目次で興味を引かれたページをめくり、あちこち飛ばし読みするのが楽しい。沖縄についてのコラムには、沖縄の現状に通底する記述も多く、読ませる。

 B6判、百八十八㌻。こども冨貴堂(七条買物公園)で千三百円(税別)で販売している。

 高田さんの「ご自由にどうぞ」の言葉に甘えて、売り上げは「旭川に公立ものづくり大学の開設を目指す市民の会」の活動費として寄付させていただくことにした。蛇足ながら。

(工藤稔編集長)