あさひかわ新聞に、絵とエッセイ『散歩の目線』を執筆している堀川真さんが絵を担当した絵本『私の名前は宗谷本線』(文/荒尾美知子)が昨年十二月に出版されました。「ちょっと昔の子どもたちのくらし」シリーズ(あすなろ書房・全五巻)の一冊です。

 「ちょっと昔の…」は、一九六〇年代に日本の様々な地方で暮らす小学生が登場する絵本です。その第三巻『私の名前は宗谷本線』は、旭川から北に延びるJR宗谷本線の真ん中あたりにある名寄と、終点稚内の途中にある筬島(おさしま)が舞台です。

 堀川さんのやわらかなタッチの、それでいて細かな描写の絵が、半世紀前の道北地方の町や村に私たちを誘います。

 蒸気機関車は力強く北へ向かって走ります。その沿線で、稲刈りを手伝うアキラ、鉄道員のお父さんと燃料の薪を切り出すミノル。身近にいたヒツジの毛を刈って糸を紡いだりセーターを編んだりする様子、そして牧場の仕事などと子どもたちの遊びや暮らしが描かれます。

 冬じたくが終わった秋のある日、ミノルの家で、食事会が開かれます。ジンギスカン、カボチャだんご、トウキビ…。

 旭川地域で暮らす私たちには、ちょっと「そうだったかな?」という場面もありますが、五十年前に思いを馳せ、今の便利過ぎる暮らしを見直してみるきっかけにするのも良いかも知れません。

 堀川さんは、「子ども向けに描いたつもりでしたが、意外にもあの時代を知っている大人が喜んでくれました。いま、私たちが食べたり、身につけたりしているモノの作り方が載っている絵本です。暮らしをつくる手触りみたいな感覚を知ってほしいし、忘れている人には思い出してほしいと思います」と話しています。

 A4変型判、三十二㌻。千八百円(税別)。市内では、こども冨貴堂(七条買物公園)などで扱っている。
(工藤稔)