「貸し出し無料」で
1年間、奮闘

 「地域の若いアーティストを応援する」「地域と文化の交わる場所となる」「文化芸術の力で旭川を元気にする」をテーマに、地道な活動を続けているギャラリーカワバタ(川端町四)のオープンから、一年半が経とうとしている。

 代表の横井昴也(たかや)さん(34)は「これまで若い人を中心に二十人ほどが、展覧会などを開いています。その人たちとのつながりも、だんだんと出来てきていると感じています。また催しを開いた人たちが、別なところで一緒に活動しているという話を聞くと、輪が広がっているようで、うれしくなりますね」と語る。

 ギャラリーのオープンは二〇二一年四月。横井さんが二、三歳のころまで住んでいた家を一部改装して利用している。二階建てで、一、二階とも三~四部屋ほどのこじんまりとした家で、二階をギャラリーとして使用している。

 当初、横井さん一人で運営していたため、土・日曜日のみの開館だったが、現在はボランティアで運営に携わってくれる人が、横井さんを含め五人と増えたことから、利用者の要望に応えられる日程を組めることが多くなったという。

 横井さんは「若い人たちにとって、これから先を目指すためのステップの一つとなるためのギャラリーを、と思い開設を思い立ちました。お金がなかったのでクラウドファンディングで資金を集め、改装費用に充てました。一年間はやり切ろうと決心し、無料で貸し出しました」と語る。

 「貸し出し無料」の一年間、横井さんは笑って答えないものの、“持ち出し”は相当な金額になったようだ。

 その辺のところを妻の和美さん(33)に聞くと、「やる気になったら、何でもできるタイプなので、特に心配はしませんでした。それに、ご両親が家を貸してくれるので、好きにしたらいいと思いました」と、優しい配慮があった。「でも、タバコは止められました」と横井さんは笑う。現在、ギャラリーの使用料は一日千五百円だ。

小さい頃住んだ家を
取り壊すと聞き…

 横井さんは大学で音楽を専攻し、ホルン演奏家を目指した。だが演奏者の道を選ぶことなく、腰掛的にコンサート会場の裏方仕事をしたり、昔の楽器の調律に八年ほど携わった後、縁があって静岡県浜松市へ。ここでアーティストと自治体や住民、企業などの仲介役となる支援事業を担っていた「アーツカウンシルしずおか」で活動。だが体調を崩し、帰旭。

 「調律の仕事の時もそうでしたが、没頭してしまうんですね。動けなくなってしまい、その時は結婚もしており、生活もあったので…。やっと体を動かすことができるようになり、高等技術専門学院で木工の勉強をしていた時、私が小さい頃住んだ家を取り壊すと聞き、浜松でやっていたようなことを旭川でも出来ないかと、考えました」と話す。

 「小さくても、一歩一歩」と室内の改装も自身でやった。「祖父が大工だったこともあるのか、それほど苦労もなくやれました。クラウドファンディングでお金を寄付してくれた人たちにも、私が作った木工の小物を送ったら、喜んでもらえました」と微笑む。

「これから外に向かって、
情報を発信します」

 二十三日(金・祝)から二十五日(日)まで、KIJUの谷川優季さん(26)が古着をリメイクした洋服やアクセサリー、それに絵やポストカードなどを展示・販売する。

 「私が展示会をするなんて考えてもいなかったのですが、カワバタさんで展示会をした人から、『やってみたら』と言われ横井さんに相談し、やることにしました。小さい頃から、好きな服を自由に買ってもらえる環境でなかったので、自分で作っていました。高校を卒業した後、札幌の洋裁専門学校に入って技術を磨きました」と谷川さん。今、展示会に向け作品づくりに専念しているという。

 横井さんは「展示の内容など一切、線引きはしません。でも、展覧会を開くことが最終目的になることなく、これから先、自分にとって励みとなるような、そんな展覧会を開いてほしい。もし来場してくれる人が少なかったとしても、展覧会を開いたことを、媒体を通して知ってもらったことだけでも、励みにしてもらったらうれしい。そのためにも、これから少しでも外に向かって、私も情報を発信していかなければと考えています」と語った。

 横井さんへの連絡は、(インタグラム TaK@Asahikawa、メール takaya451@gmail.com)へ。(佐久間和久)