イスラエル軍による軍事侵攻が続くパレスチナのガザ自治区で長年、医療活動を行ってきた、札幌の医師で北海道パレスチナ医療奉仕団団長の猫塚義夫さんによる講演会が二〇二三年十二月二十一日、市民文化会館(七ノ九)で行われ、現地の情勢を伝えた。市民有志の「猫塚義夫さんのおはなしを聞く会」の主催。

 講演会では、現地に住む知人たちから送られてくる生々しい映像を見せながら、空爆で人々ががれきの下敷きになったガザ地区の悲惨な状況を説明。被害者の七割が女性と子どもであることや、これまでの侵攻では見られなかった病院や学校への攻撃があり、国際人道法違反であることなどを訴えた。講演会時点で報道関係者が八十九人亡くなっていることにも触れ、「マスコミを攻撃するのは、現状を外に知らせるなという警告」と猫塚さんは話す。また、イスラエル兵による農地などのインフラ破壊や、燃料不足、大量失業、希望を失った若者たちの自殺や麻薬使用なども深刻な問題だという。

 さらに、「ハマス(イスラム抵抗運動)のしたことは良くない」としながらも、長年にわたる抑圧という歴史的な積み重ねの結果起きたことであることにも言及した。

 猫塚さんは「小さな希望でも、実現することが大切」と強調する。「世界の人権を守る最前線がガザ。このことをあいまいにして人権は語れない」とした上で、「私たちにできることは事実を正確に知ることと、それを周囲に伝えることです」と、一人ひとりが声をあげることの大切さを訴えた。「それによって、たとえば五人の命が救われるかもしれないし、バイデン大統領やネタニヤフ首相の攻撃的な姿勢が少しでもおさまるかもしれないのです」。

 講演会には四十六人が参加。主催者の一人である平山沙織さん(53)は「私は、生活の中で一%で良いからパレスチナのみなさんのために行動していきましょうという猫塚さんの呼びかけに共感しました。できることをやっていきたいです」と話した。講演会の参加費と会場で集められたカンパは、北海道パレスチナ医療奉仕団に寄付された。(岡本成史)