手話を言語とする、ろう者が緊急時でも安心して暮らせることができる地域社会の実現をめざす「手話言語ワークショップ」が三月二十三日、市障害者福祉センター・おぴった(宮前一ノ三)で開かれた。ろう者や町内会、市民委員会、老人福祉施設職員など約六十人が参加した。

 一部は、旭川ろうあ協会の橋本由美事務局長が「緊急時における経験と手話の必要性について」と題して講演した。有珠山噴火(二〇〇〇年)や胆振東部地震によるブラックアウト(一八年)、能登半島地震(二四年)の災害時、ろう者の人たちの気持ちの揺れや、どう対応したかを説明。避難勧告が出た時、「どうしたらいいのか」と動揺したことや「福祉避難所がどこにあるのか分からない」「テレビがつかなかったので、情報源はスマホのラインだけだった」「手話通訳者が少なかった」などの声を紹介した。

 「他人との意思疎通が難しい避難所での生活を嫌がる、ろう者は必ずいる。避難所に手話は知らなくとも顔見知りの人がいたり、手話で話すことができる人がいてもらいたいが、やはり福祉避難所の設置が必要」とも語った。

 「災害時の自助、共助で、ろう者が難しいことは、ともに老夫婦だと携帯電話の使い方が分からなかったり、避難所のテレビで字幕が付いていなかったら、情報を知ることができないことだ。ろう者は『言えない』のではなく、避難所では遠慮から『言いにくい』のです。日常生活を送る上での手話通訳者と聞こえる人と同じような情報の保障が求められる」と力を込めた。

 この後、市消防本部の川島常伴主査が、スマホからインターネットを通じて一一九番通報ができる「緊急通報システム」の登録方法などの説明があった。

 第二部は、市手話施策推進会議の栗田克実会長(旭川市立大学教授)がコーディネーターとなり、「緊急時にどう知らせる?」と題し、参加者が四班に分かれワークショップを行った。

 テーマは①救急や火災の時、周りにどう伝えるか、②胆振東部地震でブラックアウトになった時どうしたか、③能登半島地震の時は、④家庭での防災の備えは―の四つ。

 参加者からは「情報は主にラジオで収集した」「助けを求めたい人にいつでも送れるように、用紙をファクスにセットしてある」「スマホのラインで情報を得ていたが、デマも流れて来た。デマに惑わされないよう、行政の情報や信頼できる人に確認した」「ブラックアウトでは灯りがないため、ろう者は手話も筆談もできなかった」「災害後、水のストックを始めた」「緊急通報のネット一一九に登録していなくとも、一一九番通報して、スマホをトントントンと叩くといい。消防で何かあったと分かる」などの意見が出ていた。

 参加者らは約二時間にわたり、手話通訳者を通して熱心に議論した。(佐久間和久)