旭川市立大学の学生が道内外の町内会先進地を調査した報告会が三月二十六日、市総合庁舎で行われた。市内外から町内会関係者ら三十人が参加した。

 同大コミュニティ福祉学科大野剛志ゼミナールの二~四年生の十四人が、一月末から二月中旬にかけ、胆振管内厚真町「豊丘自治会」と室蘭市知利別町「知利別テラスタウン自治会」、岩手県盛岡市「三本柳南町内会」、福島県郡山市「日吉ヶ丘町会」の四カ所を訪問調査した。室蘭市知利別町を除く三カ所は、東日本大震災や胆振東部地震以降、大野ゼミの学生が地元と交流を持っていた。

 学生らは「自治会・町内会活動の維持継続と活性化のために何が必要か」「地域コミュニティの持続可能性を高めるための方策は何か」などへの回答を求め、二十五の調査項目の質問を用意して調査に臨んだ。

 学生らは調査活動の様子を撮った動画を映し出し、考察のポイントを整理して、次のように報告した。

 厚真町では胆振東部地震で住宅が全半壊し、断水した。「豊丘自治会」会長(当時)は物資配給や給水など、住民が知りたい情報を手書き新聞にまとめ全戸配布した。「一緒に同じ空間で、何かをなすことによって地域の力になる」として、祭りなどの年中行事を全戸参加で行い、自治会への興味関心と地域帰属を高めている。

 室蘭市の「知利別テラスタウン自治会」は、二〇二三年四月に組織された新興住宅街の約六十戸の町内会。ラインアプリを活用し、町内会情報を共有している。ゴミ処理など住民が関心のある共通テーマを基軸にした活動をしている。

 盛岡市の「三本柳南町内会」は「町内会役員が行政と情報を密にしていないと、行政に地域の実情を知ってもらえない」と行政と密な関係を保っている。活動を継続維持するため、「本当に必要な活動をしていくため、時には、活動を減らす決断をする」「町内会の活性化は重要だが、何のために何を活性化させていくかを考えることが重要」「次世代を担う若い人の育成が大事」に力点を置いている。

 郡山市の「日吉ヶ丘町会」は一九六六年発足した新興住宅地の世帯数五百七の大規模な地域コミュニティ。各世帯に記入してもらった「調査表」を全世帯分把握している。五十年間蓄積してきた信頼関係がコミュニティの土台となっている。役員の担い手育成のため、二年先を見据え、ローテーションを組む取り組みをしている。

 報告は二時間余に及んだ。学生らは「人と人の関係性が、重要だと感じた」「住民の共通課題の解決には町内会が必要と思った」「地域に帰ったら、自分も町内会に参加するつもり」など、調査を通した感想を話した。

 参加した、ある町内会の正副会長三人は「一番の悩みは後継者問題。誰もいないので、同じ役員が長い間務めている。学生たちの報告を、少しでも参考にしたい」と語った。

 学生たちを指導した大野教授は、町内会の主導的役割を担うキーパーソンが重要だとし、「活動を継続させるには、“命を守る”“地域の安全”“次世代の育成”の三つが原点。地域に住む個人を幸せにする町内会の視点が、国内、世界を見る視点につながる」と強調した。(佐久間和久)