薪で沸かした湯
「言うことナシ」

 「もう歳だし、脚が痛くて仕事もロクにできないので、やめようと思っていたんだが、こんなに一生懸命、それも士別からやって来て、色々手伝ってくれるので、やめるにやめれず続けているようなもんだ。ホント、こんな人たちは居ないよ」と、銭湯・こがね湯(春光五ノ五)を営む茂田茂春さん(78)は語る。

 士別市で農業を営む紺野右文(みぎふみ)さん(52)は、妻の由佳さん(43)と長男の颯人(はやと)くん(13)と三人で、週に二、三回、車で一時間余かけて、こがね湯に入浴に来る。

 紺野さんは、遠軽町の“昭和の世界”そのものの瀬戸瀬(せとせ)温泉が好きで、よく行っていた。ふと、昭和レトロの銭湯がないものかとパソコンで検索すると、こがね湯にたどり着いたという。二〇二二年暮れに早速、こがね湯を訪れたが、茂田さんが体調不良で入院中のため「休業中」の張り紙。だが、レトロな外観と大量に積まれた薪(まき)の山に期待が膨らんだという。

 初入浴は同年十二月二十八日。「竹籠の衣服入れ、カランのレバー、年季の入ったタイルや鏡、低い男湯と女湯の仕切り、芯から温まる深い浴槽など、どれも気に入りました。それに薪で沸かす湯は肌に優しく、いつまでもサッパリスッキリ感が続きます。言うことナシです」と、すっかり気に入ってしまったという。

「私たちの願いは、できるだけ長く」

 ところが、「お客さんが誰も居なくて、私たち家族の貸し切り状態になることが時々あり、『これは大変だ、もし閉店になれば、私たちが行く銭湯がなくなる』と思い、お客さんを増やすには…を考え始めました」という。

 小さな子ども向けの本を置いたり、紺野さんが採取してきたクリオネを冷蔵庫で飼育したり、額に入れたレトロな銭湯写真を男湯脱衣所の壁に何十枚も貼り付けたり、紺野さんが作っている野菜の販売をしたり、ドロップの入ったカンにこがね湯をプリントした、“こがね湯グッズ”を販売したり、と色んなことをやっている。

 茂田さんは「ビックリしてしまうよ。それだけじゃないんだ。俺が脚が悪いので、立って歩かなくてもいいようにと、電気のスイッチの位置を変えてくれたり、おまけに燃料の薪まで切ってくれる」と驚く。

 紺野さんは「何か手伝うことがあれば…と伝えてあり、『燃料の薪を』とのことだったので、時間を見て切りに来ています。屋根の雪下ろしや雪庇落とし、モーターやポンプ、それに道具類の修理などもやります。若い頃、電気工事士だったので、電気関係なら何でも出来ます。店主さんからは、お礼にとラーメンをごちそうになったり、私にとってはまるで部活動のような楽しい時間です」と微笑む。

 農作業の繁忙期、紺野さんが来旭できない時は、由佳さんと颯人くん二人で入浴に来る。「できるだけ長く、銭湯を続けてほしい。これが、私たちのたっての願いです。最近、店主さんが『やめる』と言う回数が減ったことが嬉しい」と紺野さん。

 茂田さんも「これだけ一生懸命やってくれるとね…。風呂屋をやってきて、今が一番楽しいよ」と語った顔に喜びにあふれていた。(佐久間和久)

 

こがね湯
春光5条5丁目3―3、TEL 53―2625、営業時間/午後3時~9時半、定休日/火曜日