十六日までギャラリープルプル(七条買物公園)で開催された『ふゆのあとにははるがきます』絵本原画展に関連して、文章を担当した児童文学作家・石井睦美さんと、絵を担当した絵本作家・あべ弘士さんによるギャラリートークが八日、同ギャラリーで行われた。編集者の西田菊恵さんがナビゲーターを務めた。

 石井さんとあべさんの共著による絵本は、二〇一八年の『100年たったら』に続き二作目。編集者として出発した石井さんはあべさんとの対談の中で、編集者時代や作家デビューした頃のこと、画期的だった児童文学雑誌『飛ぶ教室』の発起人・今江祥智さんとの思い出などを話し、『100年たったら』の制作秘話についても触れた。

 昨年末に出版された新作の『ふゆのあとにははるがきます』は、冬が訪れ、春が来るまでのゆったりした時間の中で過ごす人や動物たちの様子を、彩り豊かに描いた絵本。春先に木の根元の雪が輪のようにとける「根開き」の絵が、春の訪れを象徴するものとして描かれている。石井さんはこの春の訪れというモチーフの中に、「コロナ禍やウクライナ戦争など、つらいことや理不尽なことはあるけれども、春は必ずやってくる」という気持ちを込めたという。

 「昔は一月一日を迎えると空気がピンとしていて、前の日とは全然違うと感じることができました。でもある時からそれが感じられなくなって…」と、感受性の喪失にショックを受けた体験を石井さんが話すと、あべさんは「人は生まれたときに動物度が一〇〇%で、大人になるほど動物度は減っていくんです。だから低学年の子どもの方が、思いもかけないような面白い絵を描く」と応じた。

 両者、思いつくまま自由に展開される対談に、参加者は熱心に聴き入っていた。質問タイムも設けられ、質問を受けた石井さんとあべさんはそれぞれの質問者に丁寧に答えた。

 初夏の爽やかな午後、ギャラリートークには三十人が参加し、ほぼ満席となった。終了後には、サイン会と交流パーティーが行われた。(岡本成史)