「水」と「醸造技術」
2つの強み生かす

 市内の日本酒メーカー・男山(山崎輿吉社長、永山二ノ七)が十三日、敷地内に広場と売店を新設し、酒蔵全体を「OTOKOYAMA SAKE PARK(男山酒パーク)」としてリニューアルオープンした。

 同社の前身「山崎酒造」が一八八七年に道内で創業。一九六八年に現在の場所に移り、酒蔵と男山酒造り資料館を開設した。

 今では、国内外から年間約二十万人が訪れる市内有数の観光スポットになっている一方で、醸造設備の老朽化と、日本酒消費の減少という課題に直面していた同社。これらを解決するため「大雪山の伏流水」「蔵人の醸造技術」という二つの強みを生かし、日本酒以外の飲料にもチャレンジしようと考えた。その最初の取り組みが、子どもも大人も、市民も観光客も楽しめる場を作ろうと企画された、この「酒パーク」プロジェクトだという。

子どもが遊べる広場
売店にはカフェも併設

 リニューアルでは、これまで親しまれてきた日本庭園を一部改修し、子どもが遊べる「おちょこ広場」に。中央には、同プロジェクトの目玉となる全長十二㍍の「一升瓶すべり台」を設置し、おちょこのような円形の道が整備され、起伏のある地形には土管や酒タンクが埋め込まれるなど、子どもたちが走り回ったり、かくれんぼをしたりと、思い思いに遊べるようデザインされている。

 売店は、酒蔵限定商品をはじめとする同社の日本酒を販売。試飲コーナーも置くなど、これまで酒造り資料館の一階に入っていた機能をそのまま移した。加えて、カフェでは仕込み水を使ったコーヒーや「ふりふりカルピス」など、ノンアルコールドリンクやかき氷なども提供。同社の日本酒を煮詰めて作った「純米発酵シロップ」を牛乳で割った「男山特製ライスラテ」が一押しだという。「ふりふりカルピス」は、子どもが楽しめるようにと、あらかじめ原液が入っている容器に、店内の水くみ場で仕込み水を自分で入れて、振って完成させる仕掛け。

 併設されたキッズスペースでは、日本酒の製造を視覚で学べる「おコメクッション」や、「一升瓶輪投げ」で遊べるほか、こども冨貴堂(七条買物公園)セレクトの「水」「コメ」「食」「旭川」に関連した絵本、旭川デザインセンター(永山二ノ十)が選んだ地元作家の木製おもちゃも置くなど、地域の店や施設との連携を意識。さらに、店内のカウンターや什器には、緑川木材(愛別町)製造の道産木材の三層パネル「ライナウッド」を使用するなど、こだわりが随所に詰まっている。

「生まれ育ったまちに
“酒”があることを思い出して」

 同日、開かれたオープニングセレモニーでは鏡開きが行われ、同社の山崎五良取締役(39)が「子どもから大人まで、みんなが楽しめ、笑顔が溢れる酒蔵を目指していきたい」と、意気込みを話した。

 リニューアルのプロデュースとデザインを手がけた、旭川市出身のデザイナー・安食(あんじき)真さん(39)は「できあがったものを改めて目の前にして、『多世代・多国籍の人々でにぎわう、酒蔵の日常風景をつくる』というコンセプトを表現できたと思います。今後は地域の人にどんどん利用していただき、ここで遊んだ子どもたちが将来、旭川を離れたとしても、自分が生まれ育ったまちに“酒”があることを思い出してくれたら嬉しいですね」と語る。

 開園時間は午前九時~午後五時(試飲とカフェは四時半まで)。年末年始休園。

 問い合わせは同パーク(TEL 76―5548)へ。(東寛樹)