森村誠一さん合唱「悪魔の飽食」の旭川公演にあわせて、原作者の森村誠一氏が来旭し、公演前日の二十三日夜、西川徹郎文學館(七ノ八緑道)で講演した。

小説家として著名な森村氏は、同文學館開館の発起人の一人でもある。西川文学の理解者として、西川氏についての論文が掲載されたエッセイ集「煌く誉生」(講談社)を刊行するなどしている。

この日の演題は「西川文学と人生」。森村氏は「首のない暮景を咀嚼している少年」「無人の浜の捨人形のように 独身」「夜毎慟哭螢は沖へ出でて帰らず」「死ぬ前に睾(きんたま)の重さを量ってる」「天ヲサス物干竿ニ刺サル天女ノ死体」など数作の西川俳句を取り上げた。これらを芭蕉や誓子、また角川春樹の作品などと対比させながら話し、暗さや凄惨さ、卑猥さなどをエッセンスに持つ西川作品を「凄句(せいく)」と自身による造語で表現した。

会場では百十人を超える人が森村氏の講演に耳を傾け、改めて「実存俳句」と呼ばれる西川作品を味わった。

講演会場には、合唱組曲「悪魔の飽食」の作曲者で上演日に指揮をした池辺晋一郎氏も姿を見せた。池辺氏は森村氏の求めに応じて、俳句と音楽とを絡めたスピーチを披露。急なことながらもウィットに富んだ池辺氏の話に、会場からは大きな拍手が送られた。