鹿肉の生ハム鷹栖町で鹿肉を取り扱う「山恵(さんけい)」(同町十三線十六号、荒田敏彦代表)が二十五日から、鹿肉の生ハムの直販を始める。

「どうぞ食べて見てください」。荒田代表の息子さん、敏文さんが、そう言って記者に勧めてくれたのは、鹿ロース肉の生ハム。遠慮無く口にすると、「あー、これは美味しいわー」と思わず声が出た。

「ね、美味しいでしょう。鹿肉と聞くと抵抗を感じる人が多いのですが、実際に食べると『こんなに美味しいのか』と思ってもらえるはず」と敏文さん。

生ハムの味付けには大粒のペッパーのほか、数種類のハーブを使っており、飽きのこない風味。臭みは全く感じない。敏文さんによると、試食した関係者は一様に「美味しい。いくらでも食べたい」と感動するというが、記者も同感だ。試食の皿に、ついつい手が伸びてしまう。

食肉にする鹿はハンターから買い入れるが、敏文さんは「品質的に買い取れない鹿も多く、それらはハンターに返している」と話す。野禽である鹿は、狩猟後すぐに腹から内蔵を出して血抜きをし、股を広げて体熱を冷ますなど、一連の処理が肉の味を大きく左右する。しかし、全てのハンターにそうした知識がある訳ではなく、肉を駄目にしてしまうことが多々ある。駄目になった肉は、ハンターが知り合いに譲り分けるなどするため、「鹿肉は不味い」という印象が広まりがちだという。山恵では、良い状態の鹿を選んで買い取っており、その生ハムは肉の食感がありながら、生臭さは全く感じさせない仕上がりだ。

生ハムは、最も高級なロースで百グラム六百五十円(スライスタイプは五十グラム五百円)。そのほか、モモスモークは百グラム五百円(スライス六十五グラム五百円)、バラベーコンは百グラム四百五十円(同七十グラム五百円)。

生ハムのほか、精肉も販売する。ロースが一キロ三千円のほか、モモは同千五百円、バラ千二百円。焼き肉などに向くほか、ロースは刺身でも美味い。モモはシチューなどに向いているという。豚肉などと比較すれば高価だが、敏文さんは「他の鹿肉業者よりは相当に安いはず」と話す。

山恵の鹿肉製品は、工場から近い「花かいどう」(同町十三線十六号)で直販する。生ハムや精肉のほか、イヌの餌用鹿肉も販売する。問い合わせは山恵(TEL87―4229)へ。