芸術工学会第22回春期大会2014旭川(六月二十七―二十九日)の開催に合わせて、地域の問題を語り合うシンポジウムが六月二十八日、フィール旭川(一ノ八)で開かれた。

 同大会実行委員会(小川博委員長・東海大学教授)の主催。「地域におけるデザイン・ものづくり研究機関の役割」をテーマに二部構成でおこなわれ、約五十人が参加した。大谷薫さん(デザイントーク代表)が進行役を務めた。

 第一部では、澁谷邦男・東海大学名誉教授が「地域視点からのデザイン教育体系再考」と題して講演。「高校や大学、専門学校などの高等教育機関と、関係する企業や行政機関、市民など地域全体で、明日の地域を構築していく人材を育てる体制をつくることが大切」などとデザイン・ものづくり系の大学の役割について概観した。

 また、旭川に公立「ものづくり大学」の開設を目指す市民の会の長原實会長(カンディハウス創業者)が「旭川のデザイン高等教育の明日は」と題し、公立ものづくり大学設立の運動を進める理由として「二十一世紀のバウハウスを作りたい。そこで、世界に影響を与えるような教育をしたい」と熱く提言した。

 第二部では「挑戦事例の紹介」をサブテーマに、地元でデザイン・ものづくりに携わる五人がそれぞれの立場や視点から事例を紹介した。出演は、小山良榮さん(デザイナー)、杉本啓維さん(旭川家具工業協同組合専務理事)、太野垣陽介(あさひかわ新聞記者)、宮地鎮雄さん(家具職人)、矢筈野義之さん(デザイナー)の五人。コーディネーターは伊藤友一さん(旭川デザイン協議会会長)。

 矢筈野さんの事例紹介では、初めてコンペで採用されたIFDA(国際家具デザインフェア旭川)のポスターを手に「このポスターをデザインして、採用された時に、初めてデザインの面白さを実感しました。それまでは、デザインを楽しいと思った事はなく、ただ仕事としてこなしていました」と話した。

 会場には斎木崇人・芸術工学会会長(神戸)の姿もあり、「目から鱗のお話ばかりでした。芸術工学会としても旭川のこれからを応援したい」とエールを送った。

 参加した岩崎祝さん(25)は「まだ学生で勉強する立場ですが、今日のシンポジウムはすごく刺激になりました。公立ものづくり大学の活動も知っていましたが、実現したら自分もその大学で学んでみたいですね」と真剣なまなざしで話した。