作家・三浦綾子の自伝的小説『道ありき』に登場する坂道の名称が刻まれた碑の完成式が七月二十八日、春光台キャンプ場の一角で行われた。

 この道は小説の中の「私」が恋人の前川正一と一緒に歩いた、春光台に通じる坂道で、長く廃道になっていた。有志が道の復元を提案し、名称を公募して、乙部真央さん(13、春光台中学二年)の「再会の坂道~きっとまた~」に決まった。碑はキャンプ場にある三浦綾子文学碑の隣に設置された。

 昨年夏、春光台中学校のコミュニティスクールと春光台「文学の小径」友の会(芦田孝会長)が、坂道の名称を公募する実行委員会(会長・小原陽一さん)を結成。市民から公募したところ、五百三十一の候補名が寄せられた。実行委員会のメンバーと三浦綾子記念文学館の田中綾館長らによる審査の結果、乙部さんの作品が選ばれた。

 関係者約二十人が出席して開かれた完成式で、小原会長は「私が小学校の頃、この道を通り給食を運んだ記憶があります。まさに、私にとっても再会の坂道です。この碑の設置だけに終わらず、市民が坂道を自由に散歩できるような取り組みをしていきたい」と述べた。 

 乙部さんは「『道ありき』に触れ合えたのは、私にとってありがたいことでした。『再会の坂道』と名付けたのは、この小説の朗読を聞いていて、多くの人たちが再会したいと思っていた人に、きっと会えると感じたからです。こんな碑ができるなんて、本当に嬉しいことです」と笑顔で話した。

 「再会の坂道」碑の文字は、乙部さんが揮ごうした。碑は、多くの人に知ってもらおうと、春光台中学校正門前にも設置された。(佐久間和久)