旭川の歴史的建物の保存を考える会(軽部望会長)が選ぶ第二十五回建築賞に、「旧旭川市青少年科学館」(市内常磐公園)と「旧旭農場産業組合煉瓦倉庫」(美瑛町字旭)の二つが選ばれた。

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 一九六三年に建築された旧旭川市青少年科学館は、鉄筋コンクリート造・地下一階地上四階建の建物。隣接する公会堂と図書館を含めた総合文化センター構想の中で計画され、五九年に日本建築学会賞作品賞を受賞した総合庁舎の流れをくむ設計になっている。

 大きな庇(ひさし)がデザインされた鉄筋コンクリートの構造体に、レンガと河原から調達したと言われる自然石があしらわれた外観が特徴的。中二階によって区切られた空間同士を、スロープで緩やかにつなぐことで創出された空間には、視覚的な楽しさと斬新さがある。また、玄関部分以外は大きな改修歴もなく、ほぼオリジナルの状態が保たれている。

 同会は「建築・デザイン界の巨匠ル・コルビュジェが提唱した近代建築五原則『ピロティ、屋上庭園、自由な平面、自由な立面、水平連続窓』を表現するべく設計されている点や、コンクリートによる近代的なデザインにレンガを組み合わせることで、特有の地域性が表現された旭川の貴重な文化財産である」として授賞を決めた。

 もう一つの旧旭農場産業組合煉瓦倉庫は、一九三四年に建築された木骨レンガ積造・切妻(きりづま)屋根妻入り下屋付きの建物。

 一九一六年ごろ、旭農場産業組合という生産者組合によって、大規模な農場経営がスタート。三四年には、籾(もみ)貯蔵倉庫の建設に関わる高額の補助金制度が施行され、その制度によってレンガ造の同倉庫が新築された。

 建物は、切妻屋根の主屋と片流れ屋根の下屋で構成されている。柱部分に積まれた強度の高い「焼き過ぎレンガ」が、外観の色彩にコントラストを生み出し、そこに主屋がつながることでバランスの良い、美しいフォルムになっている。「旭農場産業組合と旭地区の歴史的背景をしのばせる重要な建物」と、同会が評価した。

 授賞式は四月十六日(土)午前十一時から、アートホテル旭川(七ノ六)で行われる。

 建築賞は、歴史的建物を評価し、市民の財産として大切にしたいという主張の公表などを目的としている。これまでに旧宮北邸(九ノ十二、第一回=一九九八年受賞)、旭川市役所本庁舎(第四回=二〇〇一年受賞)、旭川調理師専門学校校舎(第十三回=二〇一〇年受賞)などに贈られている。(東寛樹)