この地域で
どう取り組むかを考えよう

 「障害者権利条約の動向と、ともに学ぶ教育先進地の事例を知り、この地域でどう取り組むかを考えよう」をテーマにした「第二回タウンミーティングin旭川」が十七日、市民活動交流センターココデ(宮前一ノ三)で開かれた。主催は「障害児も地域の普通学級へ・道北ネット」(平田永代表)。

 同ネット事務局長の平田江津子さんは、あさひかわ新聞に重度の障がいを持つ自閉症の息子、カズキ君の日常生活の様子を描いた「みんないっしょがいい」を六年余にわたって連載している。ミーティングにはカズキ君の中学時代のクラスメイト五人と担任、障がい当事者、福祉関係者、教育関係者、市議ら約三十人が参加した。

 まず、インターネットを使って三月十四日に行われた第一回タウンミーティングの内容を、平田江津子さんが説明し振り返った。

 「ともに育ち、学び、働き、暮らせるインクルーシブな社会を創る」運動に取り組んでいるDPI日本会議の議長補佐の崔 栄繁(さい たかのり)さんは「世界中の人が共通して持っているものは『ちがい』。何が正常で異常なのか、というのはもともと決まっているものではない。その国の社会や文化が都合のいいように決めているだけ。障がい者の社会参加や学びに『何がバリアになっているか』考えよう」と講演した。

 カズキ君の中学時代の担任・曽我部昌弘さんと、障がい者の地域生活・権利擁護をサポートしている佐藤祐さん、元教員で市議の横山啓一さん、道北ネット代表の平田さんの四人が「旭川で『ともに学ぶ教育』をどう進めていくか」をテーマにパネルディスカッションを行い、それぞれの立場から意見を述べた。「インクルーシブ教育の先進地の東大阪市や豊中市は、『ともに学ぶ』前に人権教育がなされていた背景がある。日本の教育の在り方を根本的に変えていかないと、いつまで経っても分けられたままになっている」「すべての子が同じ量の知識を獲得しないと…という強迫。『ゆる教育』が必要。詰め込まなくてもいい」などの声が出された。

カズと接していて、
自分が学んでいると感じる

 参加者たちは、第一回のタウンミーティングの総括とカズキ君の学校の様子を放映したTBS「報道特集」を視聴した感想から、「(障がい者と健常者が)ともに学ぶために、どう取り組むか」について意見を交換した。

 カズキ君のクラスメイトは「全校集会で『校長先生の話が長いなぁ』っと思っていると、カズがブッと音を出すんです。もうおかしくておかしくて、中学校生活の中で一番笑いました。私の夢は小学校の先生になることで、色んな子どもたちが集まる学校にしたいと思います」「小学五年生で一緒のクラスになりました。その時、出席番号が私の前だったこともあり、『何でも遅い』と思ったりしましたが、中学生で一緒になった時、皆がカズと普通に接しているのを見て、『自分もそうしよう』と思うようになりました。カズと接していて、自分が学んでいることが多いと感じるようになりました」「下の学年の生徒たちがカズのことを避けていると感じた時は、避けることがないよう、カズのことをちゃんと説明するようにした」などと話した。

重度自閉症の17歳の男子
絵文字を使って会話

 「日本は障害者権利条約を批准したが、学校教育法には相容れないところがあり、現状は普通学級と特別支援学級とに分離する方向に進んでいる。ここに集まった人たちが、それぞれの立場でインクルーシブな社会を作る取り組みをしていかなければ」「現在大きな社会問題となっているいじめも、インクルーシブ教育の実現が解決の道に導くと思う」などの発言があった。

 重度自閉症の十七歳の男子も出席。思っていることを声に出して言うことはできないが、絵文字を使って、お母さんと会話することができる。

「お母さんと絵文字を使って話せることが出来るようになり、(他人から)賢いと思われるようになり、孤独でなくなりました。話が出来ないと、分かり合えないことが多い。頑張ってもできないと、分かっているのに、それを伝えることができない辛さがありました」と話した。(佐久間和久)