「アーティスト・イン・レジデンスあさひかわ」(AIRA)の招へいアーティスト、現代美術家・折原智江さん(31)の滞在成果展が二十三日、ギャラリーカワバタ(川端町四ノ四)で行われた。

 折原さんは一九九一年、埼玉県生まれ。多摩美術大学工芸学科陶専攻卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科先端表現科を修了。自身のルーツやバックグラウンドを基に、身近でパーソナルな素材と、身体的な感覚や認識とを織り交ぜながら作品を制作している。

 これまでの代表作は、せんべい屋の子どもとして生まれた折原さんが、一から技術を学んでつくり上げたせんべいの墓石や、身近な人の死に向き合うことから着想し線香で作った盆栽、自身の涙から精製した塩、実家の庭の土から作った粘土を使用した壺など。

 成果展は「その風景に用がある」と題し、折原さんが滞在中に旭川の自然などからインスピレーションを受けて制作した作品を展示。タブ粉(線香の主原料)にマツの葉を混ぜて作った線香の大型作品三点のほか、イチョウの葉やシラカバの樹皮、タンポポなど、折原さんが旭川の山や森林を散策して集めた植物の色や香りを生かした線香、クマザサとススキ数本をそれぞれひもで編んで束ね、野山で密生している風景を表現したオブジェなどが並んだ。また、大型の線香には数時間ごとに火がつけられ、来場者は立ちのぼる煙を見たり、香りをかいだりしながら、ゆったりとした時間を過ごしていた。

 折原さんは「今までの作風とは違う作品ができて、自分としても面白かったです。いつもは強いコンセプトがある中でつくるので具象的な作品が多いですが、今回はまちを歩いたり、いろいろな人と出会ったりなど偶発性を大切にして、旭川で過ごした時間も含めた風景になればいいなと考え制作しました。クマザサを編んでつくった作品は、この時期に旭川に来たからこそつくれたもの。山を散歩した時、クマザサが整列している風景に感動したので、その頭の中にある風景をもう一度編むというイメージで形にしました」と笑顔で語った。(東寛樹)