旭川明成高校を卒業する生徒に向けた記念講演会が十八日、同校体育館で行われた。

 講師は、旭川出身のフレンチシェフ・下國伸(のぶ)さん。三年生約二百人が参加した。

 下國さんは、一九八六年旭川市生まれ。料理人の父の影響で料理の道を志し、旭川調理師専門学校を卒業。箱根のオーベルジュや東京のレストランで修行を積んだ後、フランスの有名店で腕に磨きをかけ、北海道に戻る。二〇一七年、札幌の老舗フレンチレストラン・コートドールの料理長に就任。二一年に出場した若手料理人のコンテスト「DRAGON CHEF2021」で優勝を果たす。同年末にコートドールを退職し、現在はフリーランスとして活動している。

 講演では、下國さんは料理の道に進んだきっかけについて「父親が料理人で、家に料理に関する本があるなど、料理というものが身近にあった。また飲食店でアルバイトをしていた時、料理が好きだと実感して、この道に進むことになるのかなと考えるようになりました」と話した。

 続けて、箱根や東京での下積み時代に経験した苦労や転機などについて語ったあと、フランスに渡って修行した期間を「料理のクオリティは明らかに日本の方が高かった。また地域ごとの食材のポテンシャルは高いと感じたが、それはフランスでフランスらしいフランス料理を作る場合の話。北海道に帰ってきて何をすべきかと考えた時、北海道の食材で北海道らしいフランス料理を作れば、日本人に愛され、外国人にも『こんな料理があるんだ』と感動を与えられるかもしれない、とフランスでの経験から気づけました」と振り返った。

 下國さんは最後に、今春からそれぞれの道に進む生徒たちに向けて「イメージと現実とのギャップに苦しんだこともあったけれど、『これよりも大変なことはないだろう』と思えたことで乗り越えられた。最初の一歩を踏み出すのは大変だけど、その一歩を踏み出すことができれば、あとは止まることなく進んでいく。経験してダメだというものは何一つなく、必ず人生の糧になります。ちょっと遠くても光が見えた時は飛び出していけばいい」とエールを送った。

 講演を聞いた同校三年・佐藤榛起(はるき)さん(18)は、「進路を服飾か料理かで迷っていました。服飾の分野に進むことに決めましたが、並行して料理も学びたいと考えているので、とても有意義な話がたくさん聞けました。下國さんは周りの人に優しい分、自分に厳しい人なのかなと思うので、自分も何をするにしてもそのように心がけたいです」と笑顔で話した。(東寛樹)