第四十六回旭川ななかまど文化賞(同協議会主催、井内敏樹会長)の受賞者が十九日に発表された。受賞したのは、元映画看板絵師の藤林利朗さん(78)と、ピアニストの鳥谷部美帆さん(49)の二人。

昭和の映画看板再現
職人技術を継承

 美術の分野で受賞した藤林さんは、中富良野町出身。十五歳で旭川市内の看板製作会社に就職し、市内デパートや商店の看板のほか、映画館の上映作品を知らせる大型看板などを描いていた。一九七〇年代に入り、印刷技術の向上などの影響で、次第に手描きの看板は姿を消していった。

 藤林さんは二〇一九年、「手描き看板を見てみたい」と友人から言われ、約五十年振りに映画看板を描いたのをきっかけに創作活動をスタート。これまで、市内や近郊のギャラリーなどで個展を開催するなど精力的に活動している。

 二一年にまちなかぶんか小屋で行った個展では、昭和の映画館が出現したような展示で道行く人を楽しませたほか、ワークショップやライブペインティングを通じて、職人技術を継承するなどの活動が評価された。

 藤林さんは「手描きの映画看板は、当時を知る年配の人には懐かしく、若い人には新鮮に感じるのでしょう。嬉しいことに、『展示をやってほしい』といろいろな所から依頼されることが増えてきたので、今後も忙しくなりそうですね」と笑顔で話した。

演奏家として多様な活動
「子どもたち応援したい」

 音楽の分野で受賞した鳥谷部さんは、旭川市生まれ。三歳からピアノと作曲を学び、ショパン学生ピアノコンクールなど各種コンクールで優勝・入賞。米・ボストンで学び、ソロ演奏のほか、著名な演奏家の伴奏、オーケストラとの共演なども行う。現在は旭川を拠点に活動し、後進の指導にもあたっている。

 昨年三月には、「コロナ禍の中、奮闘している医療関係者に少しでも癒しを与えたい」という強い思いで、ピアノリサイタルを開催。全曲ショパンの作品で構成され、演奏の響きの美しさに聴衆は引きつけられ、楽しんだという。

 これらのピアノ演奏家としての活動が、「市民の文化活動の刺激になっている」と評価された。

 鳥谷部さんは「ピアノが嫌いになって、ぬいぐるみで埋め尽くしてピアノが見えないようにしていた時期もありました。紆余曲折ありながらも続けてきたピアノを、今回、このように評価してもらえてとても嬉しい。これからも、音楽家を目指す子どもたちを応援していきたいです」と受賞を喜んだ。

 同賞は旭川市民文化会館の完成(一九七五年二月)を契機に市民有志が創設した。今回を含めた受賞者数は個人五十六、団体六十二となった。

 授賞式は三月中旬、市内で行われる予定だという(東寛樹)