「普通学級に」と
学校の近くに転居

 インクルーシブ教育の実践に取り組んでいる東海大学客員研究員の一木礼子さんを迎え、障害児も地域の普通学級へ・道北ネット(平田永代表)の「お話の会」が十二日、市民活動交流センター・ココデ(宮前一ノ三)で開かれ、障がいを持つ子どもの保護者や会員など約三十人が参加した。
 参加者は話し手の顔が見えるよう、輪状になって座り、子どもの就学に関する市教育委員会との対応の仕方や子育てに関する悩みなどを出し合い、一木さんや参加者たちから意見を聞いた。

 ある母親は「シングルマザーで、仕事を持っています。子どもは障がいがあります。私は普通学級への入学を希望していたので、就学に関する相談は早い方がいいと思い、市教委に行くと『特殊学級でも無理かも。養護学校へ』と言われました。何回か行ったのですがダメでした。学校が遠いと子どもがかわいそうなので、学校の近くに引っ越しました。その後、市教委に行くと、今度は『学校側とよく話し合って下さい』とこれでとはまったく態度が異なり、『勝手にどうぞ』という感で…。どうしたらいいのでしょう」と話した。

実情知るカウンセラーに
引き続き相談したい

 別の母親からは、一度特殊学級に入れることに決めたが、どうしても納得できなかったので、普通学級に入れたい旨を市教委に伝えると、「特殊学級に入れると、印鑑を押したでょう!」と強い調子で反論されたという。

 また自閉症の子どもを持つ母親は、息子が中学校に通っていた時、小学校の時に悩んだことと同様のことが起きたので、市教委に「小学校の時のスクールカウンセラーに相談したい」と申し出たが「無理」と断られたという。その母親は「小学校の時のカウンセラーには、これまで色々なことを相談に乗って頂いており、ある程度話せば状況を分かってもらえるが、初めてのカウンセラーだと最初から話さなければならない。状況を分かって頂き、解決するまでには相当の時間と精神的苦痛を要する」と訴えた。

インクルーシブ教育
多様性を認め合う社会に

 一木さんや参加者たちからは、「就学は本人と保護者の希望が最優先される」「就学時、学校としても市教委が了承しなければ、受け入れることは難しくなる。『学校と話し合え』という市教委の対応は無責任。差別と言える」「日本の特別支援学校(学級)は、国連から止めるよう勧告されている。日本や中国、ロシアを除き、世界の国々は、インクルーシブ教育に取り組んでいる」などの意見が出た。

 参加していた市議は「議会でカウンセラーに関する質問をした時、市教委は、相談者がカウンセラーを選ぶことが可能であるとの答弁をした」と説明。

 自閉症で現在、旭川北高校定時制三年生の、平田さんの長男・カズキ君と小・中学校と同級生だった女性生徒は、「カズと小さい頃から一緒だったので、カズが授業中に歌い始めても、それがカズの個性だと思っている。小さい頃から一緒でなかったら、偏見の目で見たと思う。お互いの個性や多様性を認め合う社会が、いい社会だと思う」と話した。

 一木さんは「インクルーシブ教育の目的は、私たちはどういう社会にしたいのか、どういう社会の中で生きて行きたいのか、ということだと思っています」と語った。(佐久間和久)