「旭川の歴史的建物の保存を考える会」(軽部望会長)が選ぶ第二十六回建築賞に「永山神社 明治社殿」(永山四ノ十八ほか)、特別賞に「渡部医院」(富良野市本町一)が選ばれた。

 

 

                  

 永山神社は一八九二年、現在のJR永山駅裏の場所に小さな祠が建てられたことから始まった、上川管内で最も古い神社。九八年に、木造平屋建・入母屋(いりもや)造の拝殿と神明(しんめい)造の本殿、その間をつなぐ釣殿(つりどの)で構成される「明治社殿」が建築された。

 同年、天塩線(現在のJR宗谷本線)の開通に伴ない、神社敷地が停車場構内に接近し、参道上を線路が通過する事態に。参拝や祭典などの開催が危険なことから次第に移転の機運が高まり、一九一二年に現在の神社境内に移築された。

 同神社はその後、二一年に大正社殿へと改築、さらに九三年には現在の平成社殿が完成し、大正社殿は取り壊された。しかし、明治社殿の拝殿は境内に、本殿は近隣の神社に現存している。

 市内に現存する明治期建設の建物は十三棟。そのうち、復元ではなく当時の姿を残しているものは、東旭川の屯田兵屋(一八九二年)に次いで二番目に古い建物だという。

 「移築や二度の改築の際にも取り壊されることなく保存されてきた永山神社明治社殿は、歴史的価値と日本の神社様式を忠実に表現し、旭川や永山地区の歴史とともに生きてきた重要かつ貴重な歴史的建物」と評価された。

 

 特別賞の「渡部医院」は、一九二三年に建築された木造二階建ての建物。脚本家・倉本聰の「北の国から」や「風のガーデン」のロケ地としても知られている。

 寄棟(よせむね)屋根によってバランスの良いフォルムを形成し、意匠を凝らした屋根飾りと軒天部に規則的に配された瀟洒(しょうしゃ)なデザインの「持ち送り」、外壁のドイツ下見板の装飾的な水平ラインにはめ込まれた美しい組子の洋風上げ下げ窓などの意匠が、建物に上品な印象を与えている。
 九二年に行われた大規模な改修工事は、世界的建築家・丹下健三の門下生、岸崎隆生が設計。大正時代の原型を保ちながらも、現代の技術によって快適な室内環境を目指して改修された。

 同会は「北海道の近代建築史上、学術的にも貴重な歴史的建物が、富良野の歴史とともに歩み、文化財産として現代に受け継がれている」として授賞を決めた。

 授賞式は四月十五日(土)、アートホテル旭川(七ノ六)で行われる。

 建築賞は、歴史的建物を評価し、市民の財産として大切にしたいという主張の公表などを目的としている。これまでに旧宮北邸(九ノ十二、第一回=一九九八年受賞)、旭川市役所本庁舎(第四回=二〇〇一年受賞)、旭川調理師専門学校校舎(第十三回=二〇一〇年受賞)などに贈られている。(東寛樹)