東川町の松家農園(松家源一さん経営、西町七丁目)のローズマリー畑で苗木の植栽が始まった。

 畑の植栽は五年目。松家さん(74)は「一年目は本当に育つかどうか試験的に植えてみた。良い感触を得たので二年目からは段々、本数と栽培面積を増やしていった」と語る。現在、一万五千本を二十二㌃の畑で栽培している。この広さは国内最大といわれている。

 ローズマリーは地中海沿岸地方原産のハーブの一種。一般的にハーブティーや料理のスパイスとして使われており、記憶力や集中力を高める作用や血行を良くし細胞の老化を防止する抗酸化作用があるとされ、認知症にも効果があるともいわれている。

 取材に訪れた七日は朝方、雨が降り、畑は多少ぬかるんでいたが、五人の作業員が三十㌢ほどの苗木をポリ鉢から抜き出し、丁寧に植えていった。

 この苗木は二月初旬、ビニールハウスで栽培している成長したローズマリーの先端部分を切り、一本一本挿し木にして、松家さんが育てたもの。挿し木にしてから約一カ月で発根。その後、約三カ月で植栽する大きさに育てる。収穫は十月下旬。根ごと抜き取り、茎・葉の部分を根から切り離し、乾燥させる。

 松家さんは「苗木は温度や水分、それに太陽光線に当てるなど、結構気を使いながら育てます。畑での栽培マニュアルはないので、五十五年間の農業経験を活かしながら、ここまでやってきました。ようやく『これでやれそう』というところまで来た」と自信を見せている。

 乾燥させた葉や茎は一部を加工し、販売している。ローズマリーを袋詰めした「香り袋」やパウダーを練りこんだ「キャンディー」、肉や魚にまぶす「パウダー」、天日海塩をブレンドした「ソルト」、蒸留し抽出したエッセンシャルオイルから作る「スプレー」、そして東川の伏流水と三千桜酒造の清酒を使って作る「ビネガー」などがある。東川町の道の駅「道草館」などで販売している。

 苗木の植栽は天候の具合にもよるが、一週間ほどかかるとみている。(佐久間和久)