旭川在住の漫画家・日野あかねさんが『漫画 詩人小熊秀雄物語』を出版した。

 小熊(一九〇一年~四〇年)は小樽市生まれ。二十一歳の時、旭川に移住。新聞記者となり、文学的な才能を発揮して多くの詩や絵などを発表。その後、上京し、本格的に詩作や評論活動を始めた。自由や理想を奔放に謳いあげる作風で、言論弾圧が激しくなり沈黙していた詩壇に新風を送った。「池袋モンパルナス」の命名者。三十九歳で病没。小熊の功績を偲び、六七年旭川・常磐公園に詩碑が建立され、翌年、優れた現代詩人に贈られる小熊秀雄賞が創設された。現在、市民による同賞実行委員会(橋爪弘敬会長)で運営されており、今年で第五十六回を迎えた。

 日野さんは、「この漫画は史実をベースにしていますが、作者の妄想や願望で描いたシーンも随所に登場します」とことわりを入れているが、旭川文学資料館の学芸員・沓澤章俊さんや旭川郷土史ライター&語り部の那須敦志さんらから取材し、『新版 小熊秀雄全集(第一巻~五巻)』(創樹社)、『小熊秀雄論考 旭川叢書第一巻』(佐藤喜一、旭川市)、『小熊全集未収録資料』(金倉義彗、市中央図書館)、『小熊秀雄と池袋モンパルナス』(玉井五一編、オクターブ)など三十三の文献を参考。少・青年期を過した樺太時代から、小熊の最期を看取った妻・つね子の死までを詳細なタッチで描いている。

 日野さんは一九六五年、鷹栖町生まれ。十七歳で集英社から漫画家としてデビューするが、社会経験が必要と看護師を志す。二十三歳、秋田書店から再デビューし、病院勤務をしながら本格的に漫画を描き始める。二十五歳、上京し、漫画アシスタントや小学館でギャグ漫画家として長期にわたり連載。学研や読売新聞などで連載するが、体調を崩し三十四歳の時、帰省。一旦は漫画家を引退。四十一歳、夫の看護や義母の介護をしながら漫画家として復活。『のほほん亭主がんになる』(文化社)、『大往生』(双葉社)などの著書がある。

 なぜ、小熊の生涯を漫画にしようと思ったのか、「私が小熊秀雄さんにハマった理由」と題し、この本の中で漫画にしている。

 日野さんは「小熊の生きた世界は、現代の若者が生きている世界と通じるものがあり、その生き方は若い人たちに直接的に響く、と思っています。多くの若者たちにも読んでもらいたい」と話す。

 漫画本はB六判、百十㌻。あいわプリント(三ノ四、TEL 0166―26―2388)に直接注文する販売形式をとっており、注文後一週間後に受け取ることができる。三千三百円(税込み)。電子書籍の購入も、アマゾンから可能。千六百五十円(税込み)。

 漫画の販売利益は「小熊秀雄賞市民実行委員会」に寄付される。

 読んでみたい人は、市中央図書館で、二十七日まで開かれている「漫画家・日野あかね『詩人・小熊秀雄 詩とイラストで綴る展示会』」に展示されている、漫画の原本ファイルを直接手に取ることもできる。また文学資料館(常磐館内、常磐公園)でも、漫画の原本ファイルを読むことが可能。(佐久間和久)