第四十三回中原悌二郎賞に中谷ミチコさん(42)の作品「デコボコの舟」が選ばれた。

 同賞は、旭川ゆかりの彫刻家・中原悌二郎にちなみ、旭川市が一九七〇年に創設。二〇〇三年からは、二年に一度のビエンナーレ形式で実施されている。

 今回は、二一年四月一日から二三年三月三十一日までの二年間に国内で発表された、日本人作家の彫刻と立体作品が対象。今年六月、市内で行われた選考委員五人による選考の結果、「近年、著しく表現領域の深度を深め、新たな表現に挑戦している努力と、コロナ禍における世界に繊細かつ豊かな表現で挑もうとする姿勢が生み出した優れた作品」と評価され、四百四十八人の作家による発表作品の中から、同作品の受賞が決まった。女性作家の受賞は、一七年の青木野枝さんに続いて二人目。

 中谷さんの立体作品は、レリーフ(平面を浮き立たせるように彫りこんだり、平面上に形を盛り上げて肉づけした彫刻)の凹凸を反転させて、凹みでモチーフを表現する。受賞作は、初めに本体となる舟の原型を石膏で作り、それをベースに型を成形。その内側に粘土で人や鳥、樹木などのモチーフのレリーフを制作し、再度、この型に石膏を流し込むことで、舟の輪郭を消すように凹型のモチーフが現れ、何もない空間として、人や鳥や樹木が存在する、不在と実在が同居した状態をつくり出している。

 中谷さんは受賞を受け「この作品は、今まで自分が制作した中で、最も『彫刻』をつくることを意識したものだったので、心から嬉しいです。実体のないイメージを、どうすればこの世界に実現できるのか、自分なりの表現を手探りしてきました。それを、やっとこの作品で彫刻にできたのではないかと思っています。大きくて重いうえに、繊細で壊れやすく、変化しやすい、そのままの姿で、この舟が今ここで地面に持ち上げられていることを現実に表したかった」と喜びのコメントを寄せた。

 十月十四日(土)に大雪クリスタルホール(市内神楽三ノ七)で行われる贈呈式では、中谷さんの記念講演も予定されている。

 市は受賞作品を購入して、中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(春光五ノ七)に収蔵している。今回は、受賞作の関連作品を代替作品として購入し、十月十五日(日)から同館ステーションギャラリー(JR旭川駅構内)で行われる企画展で展示する。(東寛樹)