第五十八回全旭川短歌大会が二十二日、ときわ市民ホール(五ノ四)多目的ホールで開かれた。旭川歌人クラブ(大関法子会長)の主催。

 年に一度、同クラブの会員が集い、作者を伏せた歌に全員が選者となって投票し、獲得票の多い短歌に賞を贈る。四十七人が応募し、そのうち四十三人が大会に出席した。

 まず歌の披講(ひこう)を行い、それぞれの歌について会員が意見を交わした後、授賞式に移った。投票の結果、最高賞の旭川歌人クラブ会長賞には、谷口昌江さんの歌「重篤の祖父を馬橇にのせ走る手綱をひきし父を忘れず」が選ばれた。

 谷口さんは「短歌を本格的に始めたのは去年の十月からです。子どもの頃、農家を営む江丹別の実家では農耕馬を飼っていました。田舎で、家に車もなかったので、末期がんを患っていた祖父を馬橇で街の病院まで連れて行ったことがあるんです。父とはそうたくさんの思い出はないのですが、ふとその時の父の元気な姿が思い浮かび、歌に詠みました」と話し、受賞を喜んだ。

 あさひかわ新聞賞には、三枝幸三さんの「丹精の蝦夷菊持ちて君眠る十勝嶺(とかちね)見ゆる丘に上りき」が選ばれた。

 受賞者には、賞状と盾が贈られた。そのほかの受賞者と受賞作は次の通り(敬称略)。

 ▽旭川市長賞 白岩常子「夕影に竿を下ろして山女魚(やまめ)釣る父のまぼろし天塩の川浪」▽旭川市教育長賞 柊明日香「水鉢にブリキの金魚泳がせて母を待ちしは六歳の夏」▽北海道新聞社賞 阿部初恵「エゾニュウの花の咲く野にアイヌらの声の聞こゆる風の空耳」▽旭川歌人クラブ奨励賞 並木美知子「手をつなぎ吾の歩幅に合はせゆくマイナスイオンのあふれる朝(あした)」▽旭川歌人クラブ優秀賞 谷脇和子「缶詰の蓋もボトルのキャップまで無力な指にそっぽ向かれる」▽同 坂野榮子「校門に夕焼けて待つ君はゐてほほづき灯るわかれ道まで」▽旭川歌人クラブ佳作賞 杉本稚勢子「くさり編みのロープに株元つながれて波間に揺れいる朝採り昆布」▽同 大関法子「まぐはひをなして蜻蛉ゆはゆはと夏のひかりのなかに消えゆく」 (岡本成史)