社長就任後
退職者が続出

 農機具機械メーカーの渡辺農機(工業団地一ノ二)社長の渡邊幸洋さん(48)が『ゆるリーダーシップ』(ぱる出版)を出版した。

 題名の通り、本の主題は「ゆるいリーダーシップ」。はじめにで、渡邊さんは「『ゆるリーダーシップ』とは、個々を尊重し、自由で寛容的な関わりをする『ゆるいリーダーシップ』、関わりや負担を減らす『ゆるめるリーダーシップ』の総称です」と書いている。

 渡邊さんは「社長というと“強いリーダーシップ”というイメージがありますが、私はどうもそういうのが苦手で、私なりにやってきたやり方が“ゆるリーダーシップ”でした」と語る。

 同社は一九〇八年(明治四十一年)に創業。今年、百十五年を迎えている。渡邊さんは五代目社長として二〇〇八年に就任した。

 同社は一時期、全国に先駆けて循環型乾燥機を製造販売し、五十人ほどの社員を抱え、年間約四十億円を売り上げていた。この期間は十年ほど続いたが、以後業績は低迷し、渡邊さんが社長就任時には約七千万円まで落ち込んでいた。

 社長就任後、何とか売り上げを伸ばさなければと、自分の性には合っていないと思ったが、社長としてのリーダーシップをできるだけ出して、社員を叱咤激励した。結果、業績は上がったが、就任四年目ごろから「やり方についていけない」「給与が上がらないのにやることが増えて、やってられない」と退職者が続出した。

 

社長就任時と比べ
売り上げが2倍に

 渡邊さんは「そのことから、全力で会社を引っ張るだけが、良い経営者ではないことに気付いた。リーダーは頑張るだけでなく、部下に力を発揮してもらい、会社として成果を上げる自立型組織にすることが大事だと思うようになりました」と語る。

 本の中では、まず「リーダーと部下の関係性を緩め、対等な関係を築く」ことを挙げているが、「ゆるくした中で、リーダーの責任である利益の確保は絶対。プロセスよりも結果が求められるには『ゆるリーダーシップ』でも変わりない」と強調する。

 特に重要視しているのが「個人面談」。社員の性格によって、対応に違いはあるが、「聞くことに徹する」「終了時間を設けない」ことなどが重要と力説する。

 「ゆるリーダーシップ」で会社を自立型組織とすることで、リーダーに時間的、心理的、資金的な余裕が出てくる。そうすることで、社会の変化に対応し、会社の将来を展望することができると、渡邊さんは自己の体験から確信を持っている。

 社長就任から十五年、売り上げは二倍の約一億四千万円に。「少しずつですが、年々売り上げを増やしてきました。この基本となったのが“ゆるリーダーシップ”です」と語っている。

 渡邊さんは今年八月、コンサルタント業を行う渡邊幸洋事務所を開業した。

 四六判、二百八㌻、定価千五百四十円(税込み)。コーチャンフォー旭川店(宮前一ノ二)などで発売中。(佐久間和久)