「自然の中で、子どもを信じて待つ」スタイルの幼児教育・保育を実践する「森のようちえん」についてまとめられた書籍『日本の森のようちえん 自然の中で感性が育つ』が、このほど、ミツイパブリッシング(中野葉子代表)から発刊された。

 編著者の内田幸一さんは一九八三年、長野県飯綱高原に子どもの森幼児教室を開園。森のようちえん全国ネットワーク連盟の初代理事長。現在は、長野県内複数の森のようちえんやフリースクールの代表を務める。

 デンマークが発祥とされる森のようちえんは、自然体験活動をベースにした子育て・保育、乳児・幼少期教育の総称。日本では九〇年代後半から知られるようになり、現在では全国で三百カ所ほどが開園しているという。

 名称の「森」は、森だけでなく、海や川、野山、畑、都市公園など、広義にとらえたフィールドを指し、「ようちえん」は幼稚園だけでなく、保育園、学童保育、自主保育、自然学校なども含む。〇~七歳ぐらいまでの乳児・幼少期の子どもを対象に、「いっぱい遊ぶ」(自然の中で、仲間と遊び、心と体のバランスのとれた発達を促す)、「自然を感じる」(自然の中でたくさんの不思議と出会い、豊かな感性を育む)、「自分で考える」(子どもの力を信じ、子ども自身で考え行動できる雰囲気をつくる)活動をしている。

 鷹栖町にある森のようちえん「ぴっぱら」もそのひとつ。NPO法人ぴっぱらの森・代表の松下理香子さんが二〇一〇年、五組の親子と、週一回の活動からスタートさせ、現在は町内外から十八人の子どもが通っている。

 近くの地域ではそのほか、大雪山自然学校キトウシこどもの森「キトキト」(東川町)、森のようちえん「カカラ」(下川町)、たどし認定こども園「かぜっこ」(深川市)、森のようちえん「森のたね」(中富良野町)、どんころ野外学校(南富良野町)などが活動している。

創設者たちが思い語る
「将来の子どもたちの力に」

 同書は、「教育は変わらなければならない 教育は変わることができる」と題した、きのくに子どもの村学園理事長・学園長の堀真一郎さんの序文で始まり、編著者の内田さんによる森のようちえん論を収録した一章と、第一次森のようちえんブームをつくった十七園の創設者たちが、その魅力を語る二章で構成されている。

 一章では、野外保育歴四十年の内田さんが自身の経験や森のようちえんが実践する活動をもとに、今後求められる新しい教育のスタイルについて言及。二章では、十七園の園長たちが「なぜ森のようちえんを作ったのか」「何を心がけて子どもたちに向き合っているか」「保護者に伝えたいこと」などについてQ&A形式で、それぞれの園の特色や思いを語っている。

 同書の「おわりに」で、内田さんは「本書は、森のようちえんを始めた人たちが何を思い、どのような原動力で森のようちえんを始めることになったのか、森のようちえんとは何かということを知ってもらうための本です。ここから、今の子育て環境や状況がどうなっているかを読者に考えていただければと願っています。そして、本書で紹介する取り組みが、将来の成長した子どもたちの力になることを知っていただきたいと考えています」と締めくくっている。

 A5判、百六十㌻、二千四百二十円(税込)。市内では、こども冨貴堂(七条買物公園)で取り扱っているほか、アマゾンや楽天ブックスなどで購入できる。
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 同書の発刊を記念したお話会が十二月三日(日)午後二時から、こども冨貴堂二階で開かれます。ミツイパブリッシングの主催。

 森のようちえん「ぴっぱら」代表の松下さんが「こどもと自然、そして広がる世界」と題して話します。

 午後三時終了予定。参加費は五百円で、定員は先着二十人です。

 参加を希望する人は、ミツイパブリッシングの問い合わせフォーム(https://mitsui-publishing.com/contact)か、フェイスブックやインスタグラムのメッセージで「12/3お話会参加希望」と入力して、申し込んで下さい。(東寛樹)