「普通学級か」
「特別支援学級か」

 障がいのある子も、ない子も、同じ場で学ぶインクルーシブ教育の普及を目指す「障害児も地域の普通学級へ・道北ネット」(平田永代表)が主催する「あさひかわインクルーシブアクション2023」が十一月十七日から十九日までの三日間、市民活動交流センター・ココデ(宮前一ノ三)一階交流広場で行われた=五面参照。

 道北ネットはこれまで定期的にセミナーなどを開催してきたが、三日間連続というのは初。障がいを持つ子の親は、就学先を決めるこの時期、子どもを「普通学級か」「特別支援学級か」の狭間で悩むことが多い。どちらを選ぶかは、建前上、障がい児本人や保護者が選択できることになっている。

 だが平田代表は、「今の市教育委員会の対応では、障がい児本人や保護者が普通学級を選択できないのが現状です。障がいを持つ子とその家族が抱える生きづらさ、世間の圧力によって言い出せないかもしれない声を集めて行政に届けていきたい。また行政側が社会の構造や仕組みから、そのような対応をせざるを得ない状況を検証し、私たち市民と行政が協働で対話を広げる方途を、このセミナーで模索したい」と、このセミナーの目的を話していた。

 セミナーを案内するチラシには「お子さんの就学先。ひとりで悩まないで」と、障がい児を持つ保護者らに参加を呼びかけていた。

“貴重な時間”でなく、“楽しかった大切な時間”

 平田代表の長男・カズキ君は自閉症だが、本人の希望で忠和中学校の普通学級に通学した。中学校時代のクラスメイト六人と三年間担任だった曽我部昌弘さんが思い出を語った。

 「幼稚園から一緒だったので、カズが障がいを持っていると、特に意識したことはなかった。だから、マチの中で障がいを持った人を見ても、何とも思ったことはない」

 「中学二年から一緒のクラスになった。カズがいると教室内が明るくなる感じで、クラスの太陽だった。曽我部先生も他の先生にはない独特な親しみがあり、曾我部先生だったから、カズとも普通に接することができたのかも知れない」などと話した。
 曾我部さんは「クラスの子らが、日曜日にカズの家に行ったと聞いたので、『カズと遊んであげて、ありがとう』と言ったら、『遊んであげたんでない! 一緒に遊んだんだ!』と言われ、上から目線だったことを強く反省した」「クラスの子らは、障がいを持っているからと言って、カズを特別視はしなかった。例えば、給食で順番待ちで並んいるところに、カズが割り込もうとすると、女子生徒は母親みたいに『カズ、だめ!』と叱った。するとカズは素直に従った」と微笑みながら語った。

 医療系の大学に進んだ女子生徒は「カズと過ごした時間を“貴重な時間”という言い方には違和感を感じる。当たり前に“楽しかった大切な時間”だったと思っている」と言い切った。

障がい者の生活の場
市井の中で

 「障害児の居場所で働く、私たちが語ります」をテーマに掲げたコーナーでは、滝川市で多機能型通所事業所などを運営する社会福祉法人職員の服部宗弘さんと、札幌市の障がい者施設で働く平田光里さんの対談に約二十人の市民が耳を傾けた。

 平田さんは「施設内では、外出が大きく制限されています。近くにイオンがあるのですが、『何かあったら…』との理由で、これまで施設内の人が行ったことはありませんでした。ある時『行ってみたい』という人がおり、付き添って買い物をしてきましたが、何事もなく帰って来ることができました。今度はもう少し遠い所まで足を伸ばし、地下鉄に一緒に乗って見ようかと思っています」と話した。

 服部さんは「私たちが運営するグループホーム八棟で障がい者が生活しています。一人暮らしを希望する人には、なるべく希望に添うように環境を整えるようにしています。そのために一人暮らしが可能な賃金を就労支援事業所が出せることが不可欠だが、なかなか難しいのが現状だ」と語った。(佐久間和久)