「旭川が目指すべき創造都市の姿とは?」と題し、北海道文化財団理事長の磯田憲一氏が一日、市民活動交流センター・ココデ(宮前一ノ三)で講演を行った。旭川に公立「ものづくり大学」の開設を目指す市民の会(以下、ものづくり市民の会・伊藤友一会長)の主催。

 ものづくり市民の会は、公立大学の設立と新学部「地域創造デザイン学部」の開設を求める市民運動を十三年間にわたり続けてきた。ところが、今春開校した市立大学は五月、二年後に開設を計画している新学部を「地域創造学部」とすると発表。これに反発した、同会は学部・学科から「デザイン」の文字を抜いた市立大学に「デザイン」を入れることを強く求め、これまで大学側と二回にわたり意見交換を行ってきた。磯田氏の講演は、この状況を前提として開催された。

 磯田氏は一九四五年、旭川市生まれ。大学卒業後、道庁に入庁。上川支庁長や総合企画部長を経て、副知事に就任。在職中「時のアセスメント」の発案や狂牛病対策に本部長として全頭検査を実施した。退職後「君の椅子」プロジェクトに取り組む。

 磯田氏は「(市立大学の発表に)旭川市民は怒っているのか?」と集まった市民約百人に問いかけた。

 「(ものごとを決めるには)未来に向け、洞察力を持った判断が必要」「時代に向き合い、未来に向け、本当に大切なのは何なのか。感性を持ってコトに当たらなければならない。このことは過去から学ぶことが大切」と強調。

 市立大学が学部名から「デザイン」の文字を抜いたことに、「地域が持つ歴史と風土に根ざした、歴史の検証に耐え得る判断をしてほしい」とクギを刺した。

 旭川が失った大きなモノに「東海大学芸術工学部」と、世界の椅子を収集した「織田コレクション」を挙げた。デザインを学んだ多くの若者が果たしてきた役割に触れ、「東海大学の貴重さがよく分かっていなかったのではないか」と述べ、織田コレクションについても「世界に誇れるコレクション。旭川が公有化すれば、将来に向け大きな財産となった」と残念がった。

 また、ユネスコ創造都市ネットワークのデザイン分野に認定されたことについても、「デザイン都市として、市民に広く認知されているとは言えない。自治体が努力を続け、政策を実現した向こうにデザイン都市・旭川の姿が見えてくる」と語った。(佐久間和久)