三浦綾子記念文学館(神楽七ノ八)で六日、第二十五回三浦綾子作文賞の表彰式が行われた。

 同賞は、三浦綾子記念文化財団が全国の小中高生を対象に、一九九九年度に開設。三浦綾子文学が多くの人に親しまれることを願うとともに、児童生徒たちが文章を通じて社会や人間を見つめ、たくましく生きていく力を養うことを目的として広く作品を募集している。今年度は過去最多の二百八十二編の応募があった。

 自由作文部門(A)と課題図書部門(B)の二部門があり、A部門は評論、随筆、感想文、物語のジャンルから選んだ自由作文で、B部門は『氷点』『塩狩峠』など、指定された三浦作品を題材にした作文。A、B部門から最優秀賞と優秀賞のほか、上富良野町長賞、和寒町長賞、旭川市長賞が選ばれる。
 同文学館の田中綾館長は、あいさつの中で「昨年度を上回るたくさんの応募をいただきました」と話し、作品への短い感想を添えながら、受賞者一人ひとりに表彰状を手渡した。

 A部門の最優秀賞を受賞したのは、旭川実業高二年・松本悠理乃(ゆりの)さんの随筆「香りの記憶」。さまざまな記憶を呼び起こし、時には人を元気づける香りの力を、身近な人の話や自身の経験、脳科学の知識をもとに生き生きと描写した。

 松本さんは「札幌に住む祖父から受賞のことを知らされた時は信じられませんでした。『香り』はずっと書きたいと思っていたテーマ。小二の時に童話のような物語で優秀賞を受賞していて、またこの場に来られたことは本当に感慨深いです」と受賞の喜びを語った。

 B部門の最優秀賞は、成蹊中(東京都)三年・河野安里(あんり)さんの「いつまでも心の中で」(課題図書『銃口』)。作品を読んで「人間らしく生きること」の答えを自分なりに見出した過程を感想文にしたためた。

 河野さんは、「『生きるって何だろう』という問いに、多くの本を読んでも答えを得られませんでしたが、『銃口』を読んで、生きるとは『誰かの記憶に残ること』なんだと腑に落ちました。私の作品が誰かの記憶に残りますように」と述べた。

 その他、A部門優秀賞は大空町立東藻琴中三年・松橋結花(ゆいか)さんの「線と道」、B部門優秀賞は旭実高二年・長谷川円春(まどか)さんの「『母』を読んで」、上富良野町長賞は宮城学院高(仙台市)一年・千葉日向子(ひなこ)さんの「親愛なるアンネへ」、和寒町長賞は青山学院横浜英和中(横浜市)二年・横内理乃(りの)さんの「『多様性』への一歩」、旭川市長賞は道教大付属旭川中二年・小林愛奈(あいな)さんの「潮干狩峠」がそれぞれ受賞した。(岡本成史)