市内のカフェ「いちにちじゅうあさごはん cafe sunao」の店主・谷越亜紀さん(44)が今年五月、雑誌『LOCOALL(ロコール)』を創刊。「なにかと出会いたい全てのひとへ」をコンセプトに、「地元・旭川に根ざした雑誌を作っていきたい」と活動している。

橘川さんとの出会い
雑誌づくりのきっかけに

 谷越さんは二〇二〇年、大人の学びの機会をつくる地域活性化プロジェクト「熱中小学校」の企画で、音楽雑誌「ロッキング・オン」の元編集室長・橘川幸夫さんと出会った。それをきっかけに、橘川さんが運営するオンライン私塾「深呼吸学部」に参加。講義のほかワークショップなどの活動を通して、原稿の執筆や雑誌の編集などについて学んだ。

 橘川さんが今年、紙の雑誌の可能性を見直そうと考え、コミュニティ参加型マガジン『イコール』を創刊。同誌は「関係性」を重視し、記事の執筆や編集に関わるのは全て、私塾の参加者と橘川さんとつながりがある人のみ。クラウドファンディングで資金を募り、それでまかなえる部数だけ印刷する。

 谷越さんもイコールの創刊に関わり、「私自身、これまでも『まずやってみる』ことを大事にしていて、その結果、見つかったものがたくさんあります。イコールの『参加型』という言葉に引かれて、飛び込んでみました」と話す。そして、「自分がそこから飛び出し、自分の関係性だけのものをつくってみたい」との思いから、自身が編集長となり『ロコール』を創刊した。

「カフェでの関り
紙の中で同じように」

 ロコールは「LOCO」(Localの略・地元)と「ALL」(全て)をかけ合わせた造語。谷越さんの「なにかと出会いたい全てのひとへ」という、地元・旭川への思いが込められている。

 それぞれの号ごとに特集テーマを設けるスタイルで、創刊号は「偏愛」。谷越さんが友人・知人に声をかけ、原稿を書いてもらった。

 「小さい頃から本が好きで、ジャンル問わず読んできましたが、自分で作ろうと思ったことはありませんでした。本を作ることで、本人も想像していなかった世界が広がっていった仲間を見て、本をつくるのは素敵なことだと実感しました。また、橘川さんの『他人は自分の可能性』という言葉が、自分に大きく響きました。カフェを経営する中で、いろいろな人と出会えたり、お客さん同士が新たに関係を築いていくのを見るのが好きなので、紙の中でも同じようなことができたらいいなと思っています」と話す。

 同誌は季刊(年四回)での発行を予定。創刊号は『イコール』の付録としてすでに流通済みのため、現在、入手するのは難しいが、橘川さんが運営するマーケットサイト「深呼吸百貨店」(https://metakit.booth.pm/)で、誌面データをダウンロードできる。

 また、市内の銀座商店街にあったカフェの店舗を、今月、商工会議所(市内常盤通一)一階に移転オープンする予定。新店舗では、シェア型書店としての機能も持たせられるよう検討しているという。

 谷越さんは現在、九月頃の発行を目指して、二号目の制作に取りかかっている。九月末には、橘川さんが来旭し、講演会が行われる予定だ。「創刊号で原稿を書いてくれた人が『実際に本になったものを手にして嬉しかった』と、喜んでくれました。私が出会った人みんなに何か書いてもらって、アーカイブとして残していける旭川の雑誌をつくりたい」と、今後の展望を語った。

 問い合わせは、右のQRコードの専用フォームから。(東寛樹)