第二十六回三浦綾子作文賞の表彰式が十一日、三浦綾子記念文学館(神楽七ノ八)で行われた。

 今回はこれまでで最多となる、自由作文部門に百三十七編、課題図書部門に百四十五編、計二百八十二編の応募が道内外からあった。昨年十二月の最終選考委員会で、両部門の「最優秀賞」と「優秀賞」のほか、「上富良野町長賞」、「和寒町長賞」、「旭川市長賞」、「学校特別賞」の受賞作品が決定した。

 自由作文部門では、「星に少なし、月には暗し」を書いた、松橋結花さん(茨城県・S高一年)が最優秀賞。「抑制された表現で巧みに切り取られた人生の一場面は、長い小説の一部分を読んでいるような、物語の前にも後ろにも余韻を感じさせる後読感だった。何年生きていても簡単には解けない『問い』そのものを表現した好短編」と評価された。

 課題図書部門では、「実話であること」(課題図書『塩狩峠』)を書いた、郷瑛太さん(立命館慶祥高三年)が、「『塩狩峠』を、『神話のような架空の物語』としか思えなかった作者の感性・感覚は、虚実が混在する今の時代に重要だと言える。しかし、作品を読み進める中で、『人として何を大切にするかを問いかけ続けている』ことを理解し、日々の営みに落とし込んでいて、読書行為の軌跡を改めてたどる思いだった」と評価を受け、最優秀賞に選ばれた。

 表彰式の冒頭、同館の田中綾館長が「自由作文部門の最優秀賞『星に少なし、月には暗し』という象徴的なタイトルにはドキッとさせられ、どのような意味なのかを作者に聞いてみたい。『生きる』や『流れる』など動詞で一言だけのタイトルもインパクトがあり、私自身、短歌を作ったり小説を書いたりする中でタイトルを重視しているので、とても刺激をいただきました」とあいさつ。

 選考委員長の道教育大・大橋賢一教授が講評の中で、「何年も語り継がれてきた作品の何が継承される要素となっているのか、今を懸命に生きる人にとってその言葉がどんな価値を持っているのか、たくさんの作品を読んで皆さんの生きるヒントにしてほしい。本は人生を豊かにしてくれます。本を読んで考え続け、感じたことを言葉に託して、またコンクールに応募してもらえたら」と受賞者に語りかけた。

 ほかの受賞者と作品名は次のとおり(敬称略)。

 ▽優秀賞/富居玲衣(道教育大付属旭川中二年)「『線は、僕を描く』を読んで」(『線は、僕を描く』読書感想文)、大津衣吹(東京都・一ツ葉高 代々木キャンパス二年)「生きる」、本間明華(道教育大付属旭川小六年)「誠実な生き方」(課題図書『塩狩峠』)、西巻葉都(東京都・成蹊中三年)「私達の銃口」(課題図書『銃口』)▽上富良野町長賞/寺嶋珠希(市立知新小五年)「幸せのオルゴール」▽和寒町長賞/永山甚平(道教育大付属旭川中二年)「流れる」▽旭川市長賞/山本優花(旭川実業高二年)「霞桜と私の生きる道」▽学校特別賞/道教育大付属旭川中、旭川実業高、成蹊中・高(東京)(東寛樹)