旭川市は昨年十一月から今年二月末まで、「部活動の地域移行」の実証事業を行った。
部活動の地域移行は、ニーズの多様化や、学校教員の勤務負担増加を背景に、国が二〇二〇年、これまで学校教員が担当してきた部活動の指導を、地域の団体などに委ねる方針を表明。部活動の維持と、教員の働き方改革の両立を目指している。
二三~二五年度を「改革推進期間」と位置づけ、全国の自治体でモデル校を設け、休日を中心に部活動の地域移行に向けた実証事業に取り組んでいる。市は二三年度、市内の各競技団体の協力を得て、レスリングや卓球、バレーボールなど九種類のスポーツ教室を中学生向けに実施。二四年度は、愛宕中(女子バレーボール部)、中央中(女子バスケットボール部)、光陽中(陸上部)の三校で、土・日曜日に行われる部活動を対象に月四回ほど、外部の指導者が派遣された。
愛宕中では、ビーチバレーボール元日本代表の戸田由里香さんが指導。体育館全体を見て回りながら生徒たちに積極的に声がけをするほか、別の中学校との練習試合では、スパイクの動作やサーブを受ける時のポジショニングを確認するなど、気づいたポイントをアドバイスしていた。
同校二年の平栗奈々さん(14)は「技術面の細かい部分を、優しくわかりやすく教えてもらえた。狙ったところにサーブを打てるようになるなど、自分のプレーが変わるのが実感できました」と笑顔を見せた。
戸田さんは「流れがあるスポーツなので、一つのミスから雰囲気が悪くなり失点につながる場面もあります。ミスをするのがダメなのではなく、同じミスをしないようにチームのみんなで話し合うことが大切。できないことにフォーカスしないで、『もっとできるようになりたい』とか『勝ちたい』という、プラスの部分にフォーカスできるようになれば、もっと良くなっていくと思います」と、生徒たちに語りかけた。
部活動の地域移行は、全国的に進んでいないのが現状だが、神戸市は二六年度から公立中学校の部活動を終了し、地域のスポーツ団体などによるクラブ活動への移行を決めた。平日も含めた全面移行の試みは、政令市では全国初。市内全ての公立中で、二六年八月までに学校単位での部活動をすべて終了するという。
また国は、これまで「地域移行」としていた名称を、地域全体で支えるという意味から、「地域展開」に変更する案を示している。
旭川市の担当者は「部活動の地域移行を実現するには、環境整備と指導者の確保が課題。今年度の取り組みについて中学校の生徒や教員にアンケート調査を行い、その結果を踏まえて市内の競技団体と相談しながら、次年度の取り組みを進めていけたら」と語る。(東寛樹)