忘れられるのを待っているひとがいる――
原発回帰政策を進めたい人たちを念頭に、フライヤーに書かれたこの厳しい言葉は、企画展「14年目の3・11」の出品作家によるものだ。原発事故をともなう東日本大震災が起きた三月十一日に合わせて、今年も十四人の作家による展覧会が、こども冨貴堂ギャラリーKIDS(七条買物公園)で開かれている。この日の教訓を忘れてはならないという作家たちの思いを伝えるため、「~年目の3・11」として毎年この時期に行われている展覧会だ。
この展覧会は二〇一九年、「8年目の3・11」として初めて開催された。震災の翌年、子どもの本に関わる日本の絵本作家たちの呼びかけで企画された、3・11関連の大規模な展覧会と、それを受け継ぐように札幌のギャラリーで始まった展覧会を、自主的に引き継いで始めた。札幌のギャラリーでの展覧会が終了した後、同様の展覧会を今後も残していきたいと、絵本作家のかとうまふみさんらが中心となって企画。以来、ギャラリーKIDSを中心に道内数カ所を回る巡回展として、現在まで続けられている。
今年の参加作家は、安部郁乃、いくらけん、かとうまふみ、桔梗智恵美、小寺卓夫、すずきもも、橘春香、土屋聡、曳地真穂、ひだのかな代、広谷妙子、堀川真、マット和子、三井ヤスシ(五十音順・敬称略)の十四人。道内や道外から、写真、絵画、陶器、彫刻などの作品を一品ずつ出品し、それぞれの思いを作品とメッセージに込め、展示している。
いくらけんさんとひだのかな代さんは今回が初の出品。いくらさんは南相馬の実家の庭木を使い、木彫りの熊を作った。ひだのさんは、動物だけが取り残された避難区域をモチーフに絵を描いた。真ん中に描かれているダチョウは、現地で実際に見られたのだという。
また、安部郁乃さんの陶芸作品には、能登半島地震のがれきの中から回収されたワイングラスのガラスが使用されている。
初日の三月一日には出品作家によるギャラリートークが行われ、その後、作家と参加者がひとつの絵を描くライブペインティングも行われた。描いた絵は会期中、同ギャラリーに展示される。
同展は終了後、鷹栖町図書室(南一ノ三 鷹栖地区住民センター「ふらっと」内、十八日~四月十八日)と、札幌の児童書店二カ所、帯広のカフェ・ギャラリーにも巡回する予定。
会期は十五日(土)まで。入場無料。午前十時から午後六時まで(最終日は午後四時まで)。
問い合わせは同店(TEL 25―3169)へ。(岡本成史)