昨年発売された絵本『きりんのうた』(大平まゆみ・作、ひだのかな代・絵、北海道新聞社)の原画展が、こども冨貴堂ギャラリーKIDS(七条買物公園)で開かれ、最終日の三月三十日、ギャラリートークと、「きりんのうた」を歌う会が行われた。こども冨貴堂の主催。

 ギャラリートークと朗読を行ったのは、絵を担当したひだのかな代さん。声楽家の佐々木智美さんも参加し、歌を担当した。悪天候の中、二十数人が来場し、ひだのさんの話に熱心に耳を傾けた。

 文を書いた大平まゆみさんは音楽家で、札幌交響楽団の元コンサートマスター。釧路市の動物園にキリンをプレゼントするという人たちからキリンの歌をリクエストされ、探せなかったというエピソードをラジオで話したことが、絵本制作のきっかけとなった。大平さんは自ら「きりんのうた」を作詞・作曲。絵本の中でも紹介した。

 ひだのさんはトークの中で、作画を依頼された経緯や、二〇一九年に大平さんがALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病にかかり、視線入力装置を使っての執筆や作曲には大変な苦労があったことなどを話した。「大平さんに本の形で渡したい」という一心で、夏に原稿をもらい、十月三十一日に出版するというタイトなスケジュールを乗り切ったという。

 初めは少々詰め込み過ぎな文章だと感じたものの、「大平さんの書いたものが世に出ることが大事」と考え、言葉を一字一句変えなかったことにも言及。「大平さんの優しさが私の筆に乗り、大平さんと私が一体になった気分の時もありました」と話す。
 危険な戦地からキリンを迎え入れたという絵本のストーリーは、実話ではない。ウクライナ戦争に心を痛め、子どもたちに戦争の悲惨さを伝えたいという思いを込めたという。

 続いて絵本の朗読に移り、ひだのさんが本文を朗読、歌の部分を佐々木さんが歌った。その後、参加者全員で「きりんのうた」を合唱した。

 A4変型判、三十二㌻の絵本には、曲と読み聞かせの音声が聴けるQRコードと楽譜も掲載されている。価格は千七百六十円(税込)。こども冨貴堂のほか、市内の新刊書店で販売されている。(岡本成史)