建設関連の会社を経営する友人は「多角経営は善」という理念の信奉者で、これまで様々な商品の開発・製造・販売を手がけた経歴の持ち主である。その新商売は見事に、ことごとく失敗だった。ところが、昨年の三月十一日以前に、偶然ひらめいて手がけていた商品の販売が、彼の多角経営志向初の成功例になりつつある。LED電灯である。

 彼との付き合いの流れの中で、弊社の事務所の十一の蛍光灯、二十二本の蛍光管がLEDに取り替えられた。一本七千八百円ほど。零細企業にとって、安くない設備投資である。二カ月後、経理の女性社員が電卓を手に報告した。「去年の六月に比べて三〇%も電気代が安くなっています」。彼女は、泊原発が稼動を止めてから、意識してトイレや倉庫の電気を消すように心がけていたが、先月の電気代がこんなに減ったのは、間違いなくLEDのお陰だろうと、いささか興奮気味に言う。

 くだんの社長に会った折、その話をした。正直者の彼は驚愕の表情で叫んだ。「本当の話か。三〇%も節電になったか。よし、オレの会社の電灯も全部LEDに替えよう」。商売柄もあって、三・一一以前、彼はまごうことなき原発推進論者であった。今は、広瀬隆氏の新著を「これ面白いよ」と私に届けてくれるほどの変身ぶりである。彼の多角経営路線が脱原発社会の進展とともに花開くことを祈りつつ、枕はここまで。

「ポピュリズムって、どういう意味なんだ?」とガソリンスタンドの経営者は語気を強める。いわく「マスコミは、まるで消費税の増税に反対する世論を悪のように切り捨てる。その一方で、その世論を無視する形で、“政治生命をかけて”なりふり構わず増税に突っ走る総理大臣を『決める政治家』とか呼んで持ち上げる。増税を決めた政治家がそんなに偉いのかい。私どもが商っているガソリンには一㍑につき、揮発油税と地方道路税合わせて五十三・八円、プラス石油税二・四円、合計五十六・二円の税金がかけられている。ガソリン本体の値段が今は九十円くらいだから、合わせて百四十六円に五%の消費税がかかる、というわけだ。税金に税金がかかる、完全な二重課税ですよ。ところが、この業界自体が、いわば役所の許認可、規制の下に成り立っている経緯もあって、お上に対して文句は言えない。二〇一四年四月には消費税が八%になって、その一年後には一〇%に増税される。間違いなくガソリンの消費は減りますよ。経団連に加盟する大企業は痛くもかゆくもないんでしょうし、国の補助金だとかの恩恵を受けられるんでしょうが、地方の中小零細企業にとって、消費税の増税は死活に直結する事態ですよ。政治が世論に耳を傾けるのを“ポピュリズム”と批判するマスコミって、一体何なんですか」。

(工藤 稔)

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