「ただの、でかい壁じゃない」「手抜きしたんじゃないの?」「今年もこれかよ。なんだっけ、ガンダム?」、旭橋下流河畔の冬まつり会場で、そんな戸惑いの声が聞こえてきました。わざわざ電話をくれる読者もおりました。「観光客の大半は昼間にやって来る。あの雪の壁を見て感動し、もう一度旭川に来てみたいと思ってくれますかね」。六日から十一日まで開かれた第五十五回旭川冬まつりの大雪像に対する意見です。

  旭川冬まつりのウリの一つは、世界最大の雪の建造物として一九九四年(平成六年)にギネス公式記録を取得している大雪像です。これまで、姉妹都市の韓国・水原城はじめ、空想のお城を含め様々な雪の建物が造られてきました。ところが、今年は高さ二十㍍、横百三十㍍の巨大な雪の壁に、トランスフォーマー(タカラトミー社のロボット玩具のキャラクター。知る人ぞ知る、ハリウッド映画にもなった)の絵が筋彫りみたいに描かれた、まあ言わば味気ないものだったのです。

 この巨大な雪の壁は、夜、プロジェクションマッピング(コンピューターグラフィック と特殊なプロジェクターの様な映写機器を使って、建物や物体、あるいは空間に映像を映し出す)のショーを行うためのスクリーンのようなものなのでした。だから、昼間見ると「ただのでかい壁」「手抜きかい」となってしまったわけです。

 お断りしますが、私は今年の大雪像にケチをつけるのが目的でこの原稿を書いているわけではありません。先週の小紙の記事「大雪像の修復に消防のはしご車出動」にあるように、制作に当った自衛隊の方々は例年にも増して大変な苦労をしてこの壁を完成させたということです。市観光課の担当者は「高さ二十㍍の垂直の壁を造る作業は足場を一段一段積み上げながら、見た目とは逆にかなりの技術と根気と手間を要するものでした。私どもの広報や説明不足で、『手抜きじゃないか』などと言われるのは、隊員の方々に対して本当に申し訳なく思います」とうなだれていました。

(工藤 稔)

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