同年代の不動産業の経営者と話をしていて、奨学金の話になった。昨春、彼が仲介してアパートに入居した新卒の女性が、奨学金の返済に四苦八苦しているという。
「給料は十六万だっていうから、手取りは十三万なにがしだろう。そこから毎月四万円近くを返済するんだって。本人は四万五千円の部屋を希望したんだけど、無理だからと説得して、三万二千円の部屋に入ってもらった」
「就職したのはブライダル関係の会社で、帰りは毎日夜中だそうだ。おれ達の若い頃も大変だったけど、頑張れば何とかなる、いい生活ができる、そんな明るい未来が見えた。経済が右肩上がりの時代だったから、と言ってしまえばそれまでだろうが、彼女を見ていると今の若者たちは明るい未来なんてハナから期待していない気がするなあ」
「例えばだよ、毎月五万円の奨学金を受けて、大学四年間を過ごす。卒業時には二百四十万円の借金が残る。同じような境遇の男女が大学を出て結婚するとしたら、合わせて四百八十万円。そこに利子も付く。年三%だって。おいおい六百万の借金だよ。ヨーイドンの時に、そんな借金を抱えて、二人で明るい家庭を築いて、たくさん子どもをつくりましょうなんて気になるか?」
十七日の衆院予算委員会で、共産党の宮本岳志議員が、高学費と貸付型の奨学金に困窮する若者の実態を取り上げ、返済義務のない給付型奨学金への切り替えを求めたのに対して、麻生太郎財務相は「基本的に借りた金は返すのが当然だ」と述べた上で「こんなこと言うと、お前は金持ちだからそんなこと言ってるんだろうと言いたそうな顔をしてるけど」と議員たちの笑いを誘う場面があった。
(工藤 稔)
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