当事者たちは、「えっ、これってそんなに大騒ぎになって、めちゃめちゃ非難されて、社長が辞めなければならないような、それほど悪いことだったの?」という思いだろう。だって、これまでも同じようなこと、いやいやもっと際どい「ヤラセ」や「サクラ」の手法を日常的に使って来たのだからさ。もちろん、原発を管轄する経済産業省だって知っているけど、建前上は知らん振りで。

 佐賀・玄海原発の再稼動を巡る説明会に、原発賛成の趣旨の「やらせメール」を投稿するよう、九州電力の社員が子会社に依頼していたとして、非難を浴びている。説明会は政府が主催して六月二十六日に開かれ、地元ケーブルテレビが生中継で放送、インターネットでも配信された。依頼メールには、ネットで意見を送る場合は「自宅等のPCからのアクセスを」と関係者であることを隠すための「偽装」のアドバイスまである。

 番組には、「市民」らから四百七十三通のメールが寄せられ、そのうち「電力不足で熱中症が心配」「原発の廃止で産業が海外流出する」といった理由で玄海原発の再稼動に賛成する内容のメールは二百二十六通だったという。報道によると、その中に九電の指示に応えて送られたメールが何通あったかは分からないとのことだが、いずれにしろ、事業を進めたい側が世論を「捏造」する目的で、子会社の社員を「動員」したということだ。

 「ヤラセ」「サクラ」「捏造」「動員」という一連の言葉で思い出した。道北の下川町を流れるサンル川で進んでいるダム建設のことである。サンル川は名寄川の支流で、名寄川は天塩川に注ぐ。ダムの事業主体は国交省北海道開発局。その開発局が一九九八年(平成十年)に、天塩川流域の全戸を対象に「河川整備についての流域住民の意識」をテーマにアンケート調査を行っている。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。